ufpメンバー紹介

photo木村 麻紀

Maki KIMURA

プロフィール

ドイツ・ミュンヘン在住。早稲田大学政治経済学部卒。時事通信社記者を経てフリー。2004年度米コロンビア大学ビジネススクール客員研究員。地球環境の持続可能性を重視した国内外のビジネスやライフスタイルを分野横断的に取材している。著書に「ロハス・ワールドリポート ー人と環境を大切にする生き方ー」(ソトコト新書、木楽舎)、「ドイツビールおいしさの原点 -バイエルンに学ぶ地産地消-」(学芸出版社)。

ジャンル

地球環境の持続可能性を重視した国内外のビジネスやライフスタイルの動向。LOHAS(ロハス)、CSR、社会起業家など。ドイツの政治・経済・社会全般。

ホームページ

公式HP:http://www.makikimura.com/
Blog:http://makikimura.blog55.fc2.com/

執筆例

特集「ロハスに生きる」CSRとLOHAS(週刊エコノミスト 2005年10月11日号)

◎CSRとLOHAS

 米国では、ロハスビジネスや企業の社会的責任(CSR)という考え方の広がりが、ビジネス教育の現場や働き方に対する人々の意識にも影響を与えている。

米アスペン研究所と世界資源研究所(WRI)が世界18カ国のビジネススクール100校(米国68校、その他32校)から寄せられた回答を基に2003年にまとめた報告「Beyond Grey Pinstripe (グレーのピンストライプスーツを超えて)」によると、MBA課程に設けられた「CSR」「経営倫理」「社会事業」「環境と持続可能性」などに関する科目の数は、01年から03年にかけて70%も増加した。また、これらを必須科目としているMBA課程は全体の45%にのぼっている。

米アイビーリーグの一角を占める名門私立大学の1つ、コロンビア大学のビジネススクールに設けられたソーシャルエンタープライズプログラム(社会事業専修)は元々、公共団体やNPO運営を学ぶプログラムとして始まったが、約5年前から内容を大幅に拡充。現在では、こうした団体での活動を望む学生だけではなく、CSRへの取り組みに積極的な企業への就職に関心のある学生や、ビジネス的手法による社会問題の解決を目指して自ら事業を興す社会起業家を夢見る学生、さらには途上国での開発支援に関連するビジネスに関心を持つ学生たちのニーズに応えるカリキュラムを提供している。

ここで「金融とサステナビリティ」という授業で教鞭をとるブルース・アシャー客員助教授は、普段はCO2排出権取引を利用して途上国での自然エネルギービジネスを支援する金融コンサルティング会社のCEOとして世界各地を飛び回るビジネスマン。ハーバード大学ビジネススクールを卒業後、大手投資銀行勤務や金融機関向け電子取引システム会社CEOなどの経験を経て、現在の仕事を選んだ。 CEOを務めた電子取引システム会社を売却するまでは、ビジネスは利益がすべてだと信じて疑わなかったアシャーさん。しかし、事業売却後は何か社会全体にとって必要なことをビジネスにしたいと考えるようになったという。

エリート金融マンから転じて小さなコンサルタント会社のCEOになったここまでのプロセスは「大手の金融業界の連中からは疎まれるし、NGOからは嫌われるし、給料は下がるし」と、本人いわく散々なもの。CEOの肩書きの入った名刺を差し出しても、受け取ってもらえなかったことも珍しくなかったそうだ。それが今では、彼の会社の事業内容に関心を持った某巨大投資銀行のバンカーから「会いたい」と言われるようになり、京都議定書の発効で社業がにわかに忙しくなってきた。ビジネスを通じて環境や貧困などの問題を解決する社会的意義のある仕事をしたいと考える学生たちを前に、アシャーさんは「追い風は今、君たちに吹いている」と勇気づける。

アシャーさんのように大手企業のエリートから社会起業家に転じた人たちのストーリーが満載されたビジネス雑誌『Worthwhile』は、今年1月に米国で創刊して以来部数を伸ばし、7月に発売した第4号で15万部に達する人気を誇る。スタンフォード大学ビジネススクールのデビッド・モンゴメリー名誉教授らが昨年発表した北米と欧州の主要ビジネススクールの学生800人余を対象に実施した調査結果では、社会的・倫理的責任を果たしている点で評判の良い組織で働くならば給料が下がっても構わないと考える学生が97%に達し、容認できる収入の減少幅は平均で14%となった。

こうしたことからは、金銭的な収入のためだけではなく、現代社会が抱える様々な問題の解決につながるような社会的意義のあることを仕事にしたいと考える人が確実に増えていることが伺える。この動きを引っ張っているのが、ほかならぬ人々のロハスへの共感なのだろう。(了)

世界に拡大する有機農業(日本農業新聞 2004年3月28日)

◎ 世界に拡大する有機農業

 世界最大級の有機農産物・加工品見本市「BIOFACH 2004」が2月19日から4日間、ドイツ南部の都市ニュルンベルクで開かれた。今年は67ヶ国約1900の企業・団体が出展。会場には、通常の食料品並みに品数が多様化した有機食品がずらりと並んだ。シンポジウムでは、有機食品市場の成長が今後も続くとする業界予測が示される一方、今夏にも予想される欧州連合(EU)による遺伝子組み換え(GM)食品の栽培・販売解禁が近づく中で、欧州の有機農業に与える悪影響を懸念する声も聞かれ、有機食品の将来をめぐって明暗が交錯した。

▼ 北米・アジアで顕著

最新統計によると、有機認証を受けた農地は世界で2300万ヘクタール(1995年比で45%増)、2002年の有機食品市場は前年比10.1%増の230億ドル(約2兆5300万円)に達し、有機農業と有機食品市場が世界的規模で拡大し続けていることが改めて確認された。

英コンサルタント会社オーガニックモニター(本社ロンドン)は、90年代を通じてEUレベルでの有機農業支援が行われてきた欧州で、乳製品や肉類など一部品目で供給過剰が起きていると指摘。そこに、通常の食品同様に安売りを謳い文句とする有機食品専門スーパーの登場や不況の影響も重なり、成長率が鈍化していると分析した。

逆に、米国や日本を中心とした北米・アジア市場は12-15%伸びたという。消費者の食の安全性に対する不安や健康意識の高まりを背景に、こうした傾向は今後も続くとみられ、同社は03年の世界の成長率を約8%と予想している。

▼ GM解禁間近に危機感

 一方、出展した有機農家団体の間からは、EUレベルでGMが解禁されれば、GM種子や花粉の飛散に伴う“農地汚染”によって、有機農業、ひいては有機食品市場そのものが成り立たなくなる可能性があるとする意見が数多く聞かれた。

 旧東ドイツ地域の有機農家を中心に構成するGaea(本部ドレスデン)の担当者は、EUレベルのGM解禁に対応する独国内法として閣議決定された「遺伝子技術法案」(仮称)に関して、汚染の立証責任を有機農家に負わせた点が問題だと指摘。その上で「汚染の有無を常に監視するのはあまりにもコストが高く、(GM解禁は)小農家の多いわれわれのような団体の存亡に関わる」と危機感をあらわにしていた。

今年5月にも決定されるEU有機農業アクションプランに関するシンポジウムでは、「GM農業と有機農業の共存を目指す」とするEU側の説明に対し、出席者から「GM種子を使わないよう農家を指導することもアクションプランに盛り込むべきだ」など厳しい対応を求める意見が出て、有機食品市場をリードしてきた欧州の有機農業が重大な転機を迎えつつあることを印象付けた。

▼日本食材アピールの好機

有機食品の消費市場としては成長する日本だが、生産、加工、小売りとなると欧州や成長著しい米国にはまだまだ及ばないのが現状だ。

こうした中、EUの有機農業基準をクリアした鹿児島市近郊の茶畑で栽培された日本茶を欧州数カ国に輸出する「下堂園」(本社鹿児島市)は、付加価値を高めた日本食材の輸出で成果を上げた好例として会場で目を引いた。

欧米人の健康志向は高まる一方で、日本食材をアピールするまたとない好機が到来している。(了)