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ラスベガスからの手紙――アメリカよ。そこをどう経営しているのか?

国際化からの後退

長野慶太

 先日のコラムで、国際化を強めるアメリカの民間企業や連邦政府に対して地方自治体の国際化が進まず、それが米国産業界の抱える「隠れたコスト」だと指摘した。具体例を聞かせてほしいという読者の声に反応したい。

 一般論としてアメリカの地方自治体が特に敏感な行政事項は教育と雇用の拡大だ。

 雇用の拡大については、地元企業の雇用の自然増を待っているのでなく、積極的に企業の移入や創業を支援する。日本でいえば商工労働部にあたる部署のスタッフが民間企業顔負けのセールスをする。国内だけでは競争も厳しいので、当然海外企業にも目が向くわけである。

 彼らは外資を誘致するため、人脈を生かして実に親切に外国企業の投資相談にのる。ところが、その人脈がどうしても州境の中にとどまってしまう。

 たとえば移民法はどうだ? 誘致サービスのなかに移民法の相談にのる部署はまずないといってよい。そもそも彼らは自分がアメリカ人なだけに、同時テロ以降の米国のビザ発給業務が極めて厳しい基準にあることを知らない。

 百人も雇用をつくってくれるような工場だと思うと、興奮して「ビザにお困りなときは、うちの知事に電話をかけてもらいますから」くらいのことを言ってくれるし、実際そのように動く。

 しかし、現実問題として知事から電話が来たところで移民法を管轄する国土安全保障省の職員はなんとも思わない。彼らのボスは保障省の大臣であり、州知事はその命令系統にまったく入らない。

 ある州は、D航空の直行便が成田から飛んできていた。地元ビジネスの国際化が進んだが、空港の移民審査官の入国審査が非常識ともとれるほどに厳しさをエスカレートさせ、民間企業からクレームがあがった。しかし州はまったく発言権を持たない。結果、強制送還などの措置に辟易としたD航空は直行便を引き上げてしまったほどだ。

 国際課税の問題もある。州政府の「人脈」はたいてい州内事情に詳しい専門家だ。

 アメリカの子会社が日本の親会社から借りた金の利息を送金するとき、国内法に基づいて30%も源泉税を納めろと指導してしまう。租税条約(この場合、日米租税条約)に基づき、10%に減免されていることなど彼らは想像もつかない。

 結果として、外資企業は地方自治体にコンタクトせず、商務省などの連邦政府にアドバイスを求めるようになる。こうして、地方はまた一つ誘致案件を失う。ノウハウも蓄積されない。

 翻って、日本はどうだ?

ビジネス誌「財界」連載中
8/16/2005号より転載
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筆者:長野慶太
対米進出コンサルタント。ラスベガス在住。ネバダ・ジャパン・コンファレンス(www.usjapan21.com)社長。1965年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、三井銀行入社。ラスベガスの法律事務所Woods & Erickson勤務ののち、起業。大石&荻原 国際会計事務所社長。講演多数。近著に「ラスベガス 黄金の集客力」 (ダイヤモンド社刊)等がある。