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ラスベガスからの手紙――アメリカよ。そこをどう経営しているのか?

パートタイムの議員だけでつくる政府

長野慶太

 あなたの県の県議会議員がすべて「パートタイム」の政治家だと聞かされたらどう思うだろうか?

 その驚きこそ、(筆者の住む)ネバダ州のすべての上院・下院議員が副業についているということがわかった時の筆者の驚きである。政治って、そんな職業だったのだろうか?

 きっかけは「コンプライアンス」である。政治活動に、政治家の副業への利益誘導疑惑が盛んに批判され、独立行政団体である倫理委員会に起訴されるが、結果的に無罪となる。市民の不審を払拭するには情報開示を徹底すべしと考えた政府が全議員の副業とその具体的な名称を公開した。

 上院議員21名、下院議員42名。新聞の見開きを全部使って掲載されたリストを指で追えば、例外なくすべての議員が副業を持っている。そしてそのほとんどが、二つ以上の副業に従事している。

 アメリカの地方政治は日本と比べれば予算も小さく、報酬も少ない。機能が同じなら政府のサイズは小さいほうがいいに決まっているが、自分たちの地域の「リーダー」達が議会の外ではたくさんの「ボス」に仕えているというのはどうも気分がすっきりしない。一人の人間に複数の立場があることを英語で「いくつもの帽子を持つ」と表現するが、帽子の種類を情報開示することは「帽子を着替える適切さを」保証することにはならない。

 企業への利益誘導については、市民が目を光らせる限り足跡はある程度たどれる。しかし、行政に勤めている議員の場合になるともう密室の圧力の経緯は市民には調べようがない。これは三権分立の立場に逆行していないのか? 議員自身、または妻が行政に勤めている場合をあわせるとその数は実に全議員の三分の一に上るから決して仔細な問題ではない。

 ところが政治家の主張は筆者の懸念とかみ合わない。彼らは、自分たちがビジネスピープルであるなど「政治以外」の活躍場があることが「収賄」の誘惑を排除するし、なにより「政治しかわからないものに政治はできない」というコメントを発する。

 有権者もこんなときは論調をあわせがちだ。選挙の時には、候補者の「政治家としての履歴」だけでなくビジネスマンとしての力量や広い見識に選挙民は惹かれている。裁判長選挙になぞらえれば、「検事も犯罪人弁護士も両方やった人」こそが真に公正な裁判長になれるといった主張が説得力を持つ世界だ。

 賛否はともかく、パートタイムでも確かに彼らのプロ意識は強い。「パートのプロ」が存在しうるシステムは、ビジネスの世界で参考にしたいと思う。

ビジネス誌「財界」連載中
8/2/2005号より転載
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筆者:長野慶太
対米進出コンサルタント。ラスベガス在住。ネバダ・ジャパン・コンファレンス(www.usjapan21.com)社長。1965年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、三井銀行入社。ラスベガスの法律事務所Woods & Erickson勤務ののち、起業。大石&荻原 国際会計事務所社長。講演多数。近著に「ラスベガス 黄金の集客力」 (ダイヤモンド社刊)等がある。