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ラスベガスからの手紙――アメリカよ。そこをどう経営しているのか?

40歳を高齢者扱いするアメリカ

長野慶太

 ちょっと行き過ぎじゃないのか?

 アメリカで、雇用に関してまた新たな法律が定まった。年齢を理由に雇用や解雇が行われてはいけないというルールは1967年からあるのだが、約40年ぶりに改訂され、「差別の証拠がなくても訴えることができる」となった。

 その昔、69歳という最高齢で大統領になったレーガン大統領は、4年後の再選挙で対抗馬のモンデール元副大統領に「年齢」のことを盛んにあげつらわれた。

 「そんな年齢で、危機に十分対応できるとお思いですか」とモンデールが公開討論で攻撃すると、「私は年齢を討論に持ち込むことで、若いあなたの未見識を攻撃するようなことはしない」と得意のユーモアで交し、喝采を浴びた。

 人種や宗教、性別に対する差別にはアメリカはとても敏感だが、年齢に対する差別は少し難しい。討論ではレーガンに負けたものの、高齢になれば業務能力が落ちるはずというモンデールの指摘は一般論として納得される。

 この「年齢差別」に該当するのは70歳とか65歳という話ではなく、40歳以上が該当する。1億5千万人の労働人口のうち、すでに半数は40歳以上だ。

 株式会社アメリカは今後40歳以上の雇用や解雇に相当神経質にならざるを得ない。

 たとえば、ある職種がとりあえずコンピューターを必要としないポジションであるときに、会社がコンピューターの理解度テストを実施するともうそれだけで地雷を踏んでいる。「高齢=コンピューター理解に対して若年層よりハンディがある」という文脈が用意されるからだ。

 それだけではない。たとえばあなたの企業が、ライバル社と比べて初任給が安くて採用にハンディを負っていると考える。すると、当然給与体系を見直す。

 新人から五年目までの労働力に対する基本給を少し上方修正するのだが、やはりあなたは地雷を踏んでいる。もちろんあなたに差別の意図はないし、当然そんな証拠もない。しかし、若者だけ昇給させたということは、(差別の証拠がなくても)新ルールでは40歳以上の労働力が昇給格差をめぐって「差別された」とあなたを訴えることができることになる。

 もちろん訴えられたからといって、勝負は別だ。しかし企業は、成功報酬をテコに原告をそそのかして裁判に持ち込むトライアルロイヤー(訴訟弁護士)に相当悩まされることになるはずだ。勝っても、訴訟費用は自分でもつことが多い。

 そしてそのコストは産業界全体のコストになる。人が人を雇用し、解雇するシーンに「完璧」を求めすぎて、国の経済力がしぼんでは元も子もない。

ビジネス誌「財界」連載中
7/19/2005号より転載
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筆者:長野慶太
対米進出コンサルタント。ラスベガス在住。ネバダ・ジャパン・コンファレンス(www.usjapan21.com)社長。1965年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、三井銀行入社。ラスベガスの法律事務所Woods & Erickson勤務ののち、起業。大石&荻原 国際会計事務所社長。講演多数。近著に「ラスベガス 黄金の集客力」 (ダイヤモンド社刊)等がある。