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ラスベガスからの手紙――アメリカよ。そこをどう経営しているのか?

裁判長を目指すベガスのストリッパー

長野慶太

 筆者の地元で、現職検事が市の裁判長選挙に立候補して話題になっている。14年前、彼女がラスベガスのストリッパーだったからだ……。

 「復活」や「再生」の話が大好きなアメリカ人といえども、元ストリッパーが裁判長になろうかという可能性に反応はさまざまだ。

 なぜそんな昔の職歴が世間に広まったかといえば、そもそも検事職に応募するときに過去15年に遡ってすべての職歴を開示しなければならないルールがあったからだ。

 復活を賞賛するアメリカは、同時に善良な市民や消費者を守るためにバックグラウンドチェックを徹底する。それがときに、「やり直そうという人々」の足かせになる。

 たとえば自動車販売のように市民に密接でかつ高価なものを扱う仕事の管理職に就くには指紋を提出してFBIのチェックを受けなければならない。

 またセックスオフェンダー(性犯罪歴のある者)は住居を所轄の警察に報告することが義務づけられている。町内会などは地元にいるオフェンダーのリストをもっているので、住民の安全のためにそれを町内会ニュースで流す。公表するのは名前だけなのだが、住居登記をたどることでオフェンダーがどこに住んでいるかが誰にもわかるようになっている。

 過去の出来事はとりあえず未来とは無関係だ。しかし、未来の仕事ぶりを予想するには過去から推測するしかない。

 そしてバックグラウンドチェックとは、過去の出来事を未来に投影するフォーミュラ(計算式)のようなものでは決してなく、20年前の悪人は20年後も何をしでかすかわからないという短絡な「消去方式」に過ぎない。

 犯罪者もかつては更生後に別の州へ移り、フレッシュスタートが出来た。

 現代は、個人情報は各州の独自性を軽く飛びこえ、ITインフラに支えられて全米を網羅する。

 あるいは、カジノのような大量の現金を扱う商売となると、管轄警察の許可証がないと職につけない。ところが仮に不起訴でも逮捕歴があるだけでたいていその許可証はでないのが現実だ。

 有罪判決が出るまで無罪というのが法治国家の原則なのに、である。

 アメリカは「復活物語」に沸く。しかしそれは中身をよく見なければならない。

 貧困や破産から立ち直った者への賞賛はたしかに惜しみない。むしろヒーロー視さえされる。一方で、ある種の職業や犯罪歴への偏見は日本同様に根強い。

 情報化社会とは「間違った選択」を20 年たっても許さない社会とも言える。

ビジネス誌「財界」連載中
7/5/2005号より転載
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筆者:長野慶太
対米進出コンサルタント。ラスベガス在住。ネバダ・ジャパン・コンファレンス(www.usjapan21.com)社長。1965年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、三井銀行入社。ラスベガスの法律事務所Woods & Erickson勤務ののち、起業。大石&荻原 国際会計事務所社長。講演多数。近著に「ラスベガス 黄金の集客力」 (ダイヤモンド社刊)等がある。