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ラスベガスからの手紙――アメリカよ。そこをどう経営しているのか?

自家用車をピンクに塗る経営

長野慶太

 SOHOやベンチャーと言えば聞こえがいいが、現実にはアメリカの自営業者は相当な長時間労働で頑張っている。半日サラリーマンをやって残りの半日で自営をする人もいる。もちろん、盆も正月もない。

 その商魂の迫力は時に広告活動に投影される。さまざまな工夫をしてお客さまをあっと言わせている。

 とにかく目を引かなければ広告にならない。そして金をかける余裕はない。

 自分の車に目いっぱい広告を塗装する方法などはその一つだ。

 筆者のオフィスの目の前にある巨大なショッピングモールでこんなトラブルがあった。

 ペット美容師が自家用車を強烈なピンク一色に塗り、そこに犬の絵を描いて電話番号を大きく入れた車を乗り回していた。彼女はモールのなかの店に朝食をとりに来て、車は駐車場に停めた。

 確かにピンク一色というのはすごい。百軒もテナントがあれば、その内の誰かがクレームをつけたに違いない。「モールの駐車場での広告活動をやめるように。さもなくばレッカー移動する」という警告書が車に貼られて彼女は激怒した。

 たしかに、テナントたちの高い家賃にはモールの広告料が含まれている。

 すると、モールの敷地内でテナント以外の者が無料で広告活動をするのはフェアではないという気持ちはわかる。

 しかしペット美容師の車が駐車禁止となれば、その他、アメリカ経済を支えているありとあらゆるベンチャーたちが「買い物」にいけなくなる。

 不動産、害虫駆除、庭師、鍵屋などはむしろ自家用車に広告を載せないほうがこの国では珍しい。

 金のかからない広告と言えば、他にも、地元の銀行には入り口に掲示板があり、そこに自営業者は名刺を貼り付けて宣伝する。用がなくても銀行をまわって、同業者の名刺を密かにはがしてそこに自分のものを貼っていく人もいる。

 商工会議所には、パンフレットを並べさせてもらえる棚があり、ライバルの束を見て、その倍を積み上げて帰っていく自営業者に、筆者は商魂を見る。

 さて、このトラブルは、「ペット美容師もお客さまなので、お客さまの駐車した車に警告は出せない」ということで和解した。ところが報道の中身をよく見ると、美容師は朝食を取りに寄った店からなんと五百メートルも離れた、交通の多い場所に駐車していた。なんのために?

 「まあ……朝の運動の為にね……」と美容師のとぼけた答えが返ってくる。

 なるほど、そういうことだったのか!

 またまた商魂を見た。

ビジネス誌「財界」連載中
6/21/2005号より転載
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筆者:長野慶太
対米進出コンサルタント。ラスベガス在住。ネバダ・ジャパン・コンファレンス(www.usjapan21.com)社長。1965年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、三井銀行入社。ラスベガスの法律事務所Woods & Erickson勤務ののち、起業。大石&荻原 国際会計事務所社長。講演多数。近著に「ラスベガス 黄金の集客力」 (ダイヤモンド社刊)等がある。