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ラスベガスからの手紙――アメリカよ。そこをどう経営しているのか?

自家用車をピンクに塗る経営

長野慶太

 アメリカの歴史上、かつてこれ以上の「呉越同舟」はなかったに違いない。

 92年の大統領選挙で戦ったブッシュ父とクリントンの二人が05年に再度向かいあった。ニアミスとかそんな生ぬるいものではない。ブッシュ現大統領の意を受け、スマトラ災害救援の特使として特別機に二人で一緒に乗ったのである。

 ベッドルーム一つと執務室しかない。どうやって長時間を過ごしたのだ?

 二人は本人同士の選挙後も、共和党と民主党のそれぞれのキースピーカーとして遊説の役割を担う。クリントンがブッシュ現を厳しく批判すると、ブッシュ父夫人のバーバラは「クリントンとは口も利いたこともないし利きたいと思ったこともない」とテレビでばっさりやる。言うまでもない犬猿の仲だ。

 ところが、特別機がスマトラに到着するとその機内での秘話をブッシュ父が語りだした。クリントンは自分は執務室でトランプでもして過ごすからとブッシュ父にベッドを譲ったという。ブッシュ父は交代でベッドを使おうと主張したがクリントンは聞き入れなかった。ブッシュ父が夜中に覗いたところ、クリントンは床の上に大の字で寝ていたという。米国元大統領が床の上で寝ているのである。ブッシュ父は密かに感謝の念をもった。

 この秘話が披露されてから、米国メディアにはやたらとブッシュ父とクリントンが並ぶ写真が掲載されるようになった。

 つづけてローマ法王が亡くなると、弔問に並ぶ写真で、やはりブッシュ父の隣に立ったのはクリントンである。

 アメリカは間違いなく人脈社会である。他人同士があっという間に意気投合する「友達作り」の早業に我々が驚いている一方で、合理的なビジネスシーンでも紹介者の有無が採用や協業などに大きな影響を与えている。

 間違えてはいけないのは、敵はいつまでも敵ではないということだ。米国経営の世界では、昨日の敵と融和することはザラである。「他人」の能力をゼロから推量するよりむしろ旧知の「敵」がいい。だから今日の敵との戦い方も計算高い。

 ストレートに聞こえる英語の文化的な問題から、敵との激しい議論はそれで完璧に人間関係を断絶するようなものに聞こえることもあろうが、実際はそうではない。優秀なビジネスマンは、どんなに激しく言い争っても、「これを言ったらおしまい」という言葉を絶対に使わない。

 将来、対人関係の文脈が大転換されてもその文脈に合わせられるだけの態度と言葉の選択を計算している。

 最近の日本では、TOBを巡って経営者の感情的な敵対発言が目立つ。それは真に長期的視野に立ってのものだろうか?

ビジネス誌「財界」連載中
6/7/2005号より転載
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筆者:長野慶太
対米進出コンサルタント。ラスベガス在住。ネバダ・ジャパン・コンファレンス(www.usjapan21.com)社長。1965年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、三井銀行入社。ラスベガスの法律事務所Woods & Erickson勤務ののち、起業。大石&荻原 国際会計事務所社長。講演多数。近著に「ラスベガス 黄金の集客力」 (ダイヤモンド社刊)等がある。