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ラスベガスからの手紙――アメリカよ。そこをどう経営しているのか?

前代未聞。太ったらクビにする経営!

長野慶太

「タブーが怖くて、経営ができるか!」とその経営者は言ったのかどうか……。

カジノホテルと言えば、無料のカクテルを配るセクシーなカクテルウエイトレスがつきものだが、あるホテルではウエイトレスになんと「体重制限」を課すという人事策が始まった。企業として美貌レベルを管理して保つことで他社より優位に立とうという発想である。

カクテルウエイトレスの美貌はカジノとしては確固たる集客手法だ。全米のあちこちのカジノを調査に歩いた筆者としては、高級カジノほど美貌へのこだわりが強いという私見を呈さざるを得ない。

ところが、一度雇った美しいウエイトレスがぶくぶく太ってしまうことにどこのカジノホテルも頭を抱えている。人間は太るときは速い。

雇用での差別に厳しいアメリカでは男女の差別はもちろん、年齢、信条など、職務に関係ないいかなる理由での差別雇用や差別解雇を認めない。アメリカの履歴書に決して顔写真を貼らないのはそういう理由である。

なら、肥満を理由に解雇していいのか?

この企業の新ルールはこうだ。カジノ企業のブランドにふさわしい接客イメージの維持を従業員に求める一環として体重の自己管理を課し、採用時の体重の7%を超えて太った場合には会社が提供する「減量プログラム」への参加を義務づけ、90日を上限にレイオフされる。それでも7%以内に落とせず、医療上の理由がない場合は解雇である。

これまでにも、会社のルールに反して「化粧をしない」ウエイトレスを解雇することの是非が争われたことがあるが、それは本人の身体とは直接関係がないのであまり問題視されない。しかし、今回はまさに従業員の身体特性に踏み込んだ人事政策で激しい議論を呼んでいる。

予想通り、たった二週間でこのホテルはさっそく訴えられている。身体障害を理由に解雇してはいけないという法律に抵触するというのが訴訟理由だ。

身体特性を理由の解雇だから違法とされるか、それとも、体重は管理できる=個人の選択の問題だからドレスコード(服装規定)と同様合法的な規則とすることができるか、司法の判断が注目される。
賛否をここで論じるつもりはない。

しかし、なかなか他社と差異化出来ないホテル運営のなかで、美貌の管理というタブーに手を伸ばして勝負にでたことは、あらためてホテル・マーケティングの厳しさを浮き彫りにしている。

ちなみに、男性カクテルウエイターもスリムなウエストが採用条件である。

ビジネス誌「財界」連載中
5/24/2005号より転載
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筆者:長野慶太
対米進出コンサルタント。ラスベガス在住。ネバダ・ジャパン・コンファレンス(www.usjapan21.com)社長。1965年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、三井銀行入社。ラスベガスの法律事務所Woods & Erickson勤務ののち、起業。大石&荻原 国際会計事務所社長。講演多数。近著に「ラスベガス 黄金の集客力」 (ダイヤモンド社刊)等がある。