ufp > Features > ラスベガスからの手紙

ラスベガスからの手紙――アメリカよ。そこをどう経営しているのか?

市長、それはないでしょう

長野慶太

「アメリカの国際化」は進むどころか後退しているのではないか、と思わせることがあった。

スマトラ沖津波で最も被害を受けた地域の一つ、タイのプーケットはアメリカに姉妹都市を持っていた。ラスベガス市である。

米国ではブッシュ大統領のすばやい救援活動が国民の広い支持を得た。外交はどこの国でも中央(連邦)政府にとって重い任務の一つだが、戦争や災害を通してますます政治の世界に外交が重い役割を占めるようになってきている。

それに引き換え地方自治体はどうだ。ラスベガス市は「姉妹」の津波災害に対してなにも動かなかった。それどころか市長はこう言った。「市民の皆さん、募金してあげてください。赤十字に」と。赤十字? 聞き違えたかと思った。

予算がないから、という問題ではない。メディア登場が大好きな同市長は地元の教育資金のために自らチャリティゴルフトーナメントを主催して自分の似顔絵を出した広告を新聞に躍らせている。

実は姉妹都市交流はこの市長が選挙のときの既成政策に対する反論の一トピックだった。観光客を増やし、また地元への外資を誘致することを期待して約二十年前に始まった姉妹都市交流活動だったが、「経済成果が見えない」と市長は主張し、自分が当選すると活動のほとんどを中止させてしまっている。

筆者は当時ラスベガス市の依頼を受けて日本のある市と姉妹都市締結の根回しに動いていたが、まさに一選挙によってハシゴを外された。

そもそも姉妹都市は地元市民の国際化への理解を促す「文化交流」である。経済成果が上がらないからと一方的にそっぽを向いてしまうことが許されるのであろうか。ましてや今回は「姉妹」の一大事である。

一般に、「外交の継続性」とよく言う。

時の首長に関わらず、歴代続けてきた外国との交流・交渉は継続するのが国際社会の暗黙の了解だ。人を派遣せずとも、税金を使わずとも、チャリティゴルフに準じた方法で支援する気持ちはないのか。

アメリカ最大のコンベンション都市ラスベガスでさえこうだ。アメリカ全体を見渡しても、多くの地方自治体は既存の国際交流の機会を活かしきれていない。

国際化をますます進める民間企業。

国際協調が大統領選挙に対して重要なディベートカードとなった連邦政府。

――それに比して、ますますドメスティックに向かっていく地方行政。

その意識の差の拡がりは、アメリカ経済の「隠れたリスク」だと筆者は考える。

日本は、どうだ?

ビジネス誌「財界」連載中
3/22/2005号より転載
最新コラムは本誌をご覧ください

筆者:長野慶太
対米進出コンサルタント。ラスベガス在住。ネバダ・ジャパン・コンファレンス(www.usjapan21.com)社長。1965年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、三井銀行入社。ラスベガスの法律事務所Woods & Erickson勤務ののち、起業。大石&荻原 国際会計事務所社長。講演多数。近著に「ラスベガス 黄金の集客力」 (ダイヤモンド社刊)等がある。