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ラスベガスからの手紙――アメリカよ。そこをどう経営しているのか?

川の流れに逆らって泳ぐ経営。変わりゆく大規模小売店

長野慶太

大規模小売店が小規模店にとって脅威なのは日本だけではない。筆者の住むラスベガスでも、巨大な小売店舗(たいていは全国チェーン店)が登場して街の風景を変えていく。典型的なのは創業者サム・ウォルトンが「商人は川の流れに逆らって泳げ」と言った、かのウォルマートだ。

ところでこのウォルマートが最近珍しい理由で訴訟された。ウォルマートの店に置かれたCDに猥褻な歌詞が含まれていて、それを知らないで年頃の子供に買った親が中身を聴いて激怒して訴えたというのである。
つまり、ウォルマートだから安心して買ったんだ、それが猥褻な歌詞のあるCDを「警告表示」もなく置いておくとはけしからんという訴訟だ。

原告は、同CDをウォルマートで買った顧客それぞれに約八百万円(を上限に)を損害賠償として払えと求めている。訴訟動機は多分に金目当ての「またか」の臭いがするが、しかしウォルマートが店に並べるCDやDVDの中身に対してそこまで関与していることは事実だ。そうでなければ訴える勝算は極めて薄い。
かつて人々は安いから、または品揃えが豊富だからウォルマートに行った。ところが現代ではこうした「検閲機能」を含めて、なんでも「安心が揃っている」ことでウォルマートに通う顧客も多い。

もちろん、魚が新鮮だとか肉の産地表示が嘘でないというレベルの安心ではないことはご理解いただける。
この話は、消費者が大規模小売店に寄せる期待が変革していることを示唆している。

やはり日本に進出して怪気炎をあげている会員制小売店コストコ社では近年、車のディーラーとユニークな提携を結んでいる。

クルマを自宅近くのディーラーで買う場合、コストコを経由するとそのディーラーのコストコプライスが提供されていっそう安く買えるというシステムだ。

しかし、ポイントは安さではない。

アメリカでは、車のディーラーはその強引さゆえによくトラブルを起こす。本体価格の安さで釣っておきながら、不明な搬送費などの隠れた経費をのっけてくるなど、消費者はいつも不安だ。しかし「コストコ経由」だということを示せば、消費者は自分の無知につけこまれたり、強引に売りつけられることはないと安心する。

ウォルマートやコストコはその安心を裏切れば訴えられるというリスクをあえて背負い込んでみせることで新時代のワンストップショップ――安心が揃う店――を目指しているといえる。

ビジネス誌「財界」連載中
2/8/2005号より転載
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筆者:長野慶太
対米進出コンサルタント。ラスベガス在住。ネバダ・ジャパン・コンファレンス(www.usjapan21.com)社長。1965年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、三井銀行入社。ラスベガスの法律事務所Woods & Erickson勤務ののち、起業。大石&荻原 国際会計事務所社長。講演多数。近著に「ラスベガス 黄金の集客力」 (ダイヤモンド社刊)等がある。