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ラスベガスからの手紙――アメリカよ。そこをどう経営しているのか?
社員教育と従業員の居場所をどうする。「個室」か「島」か?
長野慶太
職場で誰をどこに座らせるか? 決していい加減には出来ない問題である。アメリカではそれを、「誰にどの部屋をあてがうか」と読み替えることが出来る。
上司よりいい部屋や上級の革の椅子に座るわけにはいかない。意外なほど多くの米国企業もそういう細かいところにまで気を配る。ところで、経営者としてはそれ以上に若い労働層に対してどう教育するかが気にかかる。
筆者は企業人としての人生の半分を日本の部課単位でまとまる「島」(机を寄せ集める方式)で暮らし、残りの半分をアメリカの「個室」で暮らしてきた。
基礎編のOJTは圧倒的に「島」に軍配が上がる。筆者に言わせれば、OJTとは耳学問である。なんといっても同期や先輩の仕事ぶりを横で聞くことの教育価値はなにものにも代えがたい。
筆者などはいまだに喋りが銀行員のようだといわれるが、新人の頃に隣の先輩がお客さまにかけた電話での交渉や謝絶、依頼や社交辞令のやりとりなどは一生耳に残る財産になっている。
アメリカではこれがない。
新人は、部屋はなくとも間仕切りで仕切られたボックスのなかで仕事をする。一定の研修や、外部講習にでかけることはあっても、前述の耳学問の機会は極端に少ない。指導や叱責などは上司と部下のプライベートとする文化なので「島」化は今後もない。
ひとことでいえば、日本型経営は従業員教育のうちの基礎編をとても効率的に施しているといえる。自信をもちたい。
アメリカはこのあたりは良くも悪くも我流なので、結果の差がとても激しい。アメリカが新卒労働力に魅力を感じていないのは、転職率の問題も大きいが、こんな社員教育の非効率性にも要因がある。
一方で、応用編には「個室」に軍配が上がる。「島」にいて企画書を練るなどはとても困難だ。上司がふいに消えて、実は喫茶店で仕事をしているというのはこのへんの日本的な妥協策といえる。
個室だったらより効率があがる。従ってアメリカでは、管理職には別のフロアを借りてでも個室を与えようとする。
他人の視線を完全に遮断してしまうと人間が怠惰になるので、多くの米国企業では、個室のドアを開けっぱなしておくのが暗黙のマナーになっている。
いつも閉めている人はきっとクビになるか、職務中に転職情報を探しているかのどちらかである。だから集中を要する作業のときには、意味深な「半開き」というのも稀ではない。
二十一世紀の現場運営のポイントは、「耳学問」と「視線調整」をどこで折り合わせることができるかといえる。
ビジネス誌「財界」連載中
2/1/2005号より転載
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筆者:長野慶太
対米進出コンサルタント。ラスベガス在住。ネバダ・ジャパン・コンファレンス(www.usjapan21.com)社長。1965年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、三井銀行入社。ラスベガスの法律事務所Woods
& Erickson勤務ののち、起業。大石&荻原 国際会計事務所社長。講演多数。近著に「ラスベガス 黄金の集客力」 (ダイヤモンド社刊)等がある。
