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さかぐちとおるの世界B級都市紀行

テキーラ(メキシコ)

〜メキシコの蒸留酒はこの地で生産される〜

さかぐちとおる

 テキーラと言えば、誰もが思い浮かべるメキシコの蒸留酒。この酒はハリスコ州のテキーラで生まれ、テキーラの多くはこの地で生産される。メキシコ第2の都市であるグアダラハラから西に50kmの緩やかな丘陵地帯にテキーラは位置する。私は2回ほど行ったことがあり、うち1回は観光列車のツアーに参加しての楽しい汽車旅だった。

マリアッチを楽しみながら列車に揺られて

マリアッチ楽団の熱演
マリアッチ楽団の熱演に車内は盛り上がる

 毎週土曜日に観光列車テキーラ・エクスプレスが運行されている。グアダラハラとテキーラの間を結ぶ貨物路線を、週に1日だけ観光列車を走らせている。テキーラ酒の工場見学をした後、昼食と音楽や踊りを楽しむという列車ツアーだ。

 グアダラハラ駅を朝10時に出発、ディーゼル機関車が4両編成の客車を牽引する。テキーラまでは直線距離で50kmほどだが、鉄道は迂回するような形で線路が敷かれており、車掌の話によると走行距離は80kmくらいだと言う。列車が動き出して間もなく車内サービスが始まり、乗客にテキーラのカクテルやビール、おつまみなどが配られた。そして客車に乗り込んだ専属のマリアッチ楽団が、各車両をまわって乗客のリクエストに応えて演奏し、車内はたちまちパーティのように楽しい雰囲気に包まれた。

 メキシコの音楽というと、多くの人がマリアッチを想像するであろう。実際に広く親しまれており、メキシコ音楽の象徴的なものである。マリアッチとは楽団編成のことを示し、バイオリンやギターなどの弦楽器、トランペットなどによって10人前後で構成される。演奏されるジャンルとしてはランチェラという音楽が多く、テンポの速いランチェラ・コリーダ、テンポが緩やかなボレロなども演奏される。

 テキーラに近づくにつれて、アロエのように先の尖った葉が何本も突き出している植物が車窓から見えてきた。総称してマゲイと呼ばれる植物で、和名は竜舌蘭。このマゲイの種類の中でもアガベ・アスールがテキーラの原料として使用される。テキーラに着く頃には一面がアガベ・アスールの畑になった。

農園と蒸留工場を見学

テキーラの原料アガベ・アスールを収穫する
テキーラの原料アガベ・アスールを収穫する

 列車は2時間ほどかけてテキーラに到着した。まずアガベ・アスールの農園に行き、刈り取りの様子を見学した。尖った葉の部分は切り落とされ、地下茎の部分を収穫する。苗を植えてから7〜10年くらいのものを収穫し、その地下茎の重さは50kg以上、まるで巨大なパイナップルのような形だ。これがトラックなどで工場に運ばれ、様々な工程を経てテキーラ酒が造られる。テキーラには10社くらいの大きな蒸留工場があり、個人経営の小さな製造所も数十か所あるという一大生産地だ。

 その後、蒸留工場の見学に向かう。工場に着いてまず目に入ったのは、アガベ・アスールの切り株の山だった。とても酒ができるとは連想し難い物体であるが、この原料が細かく砕かれ、高熱で蒸した後に液が絞り取られる。この液を発酵させたものはプルケと呼ばれる濁り酒のようなもので、千年以上も前から先住民たちが愛飲している酒だ。テキーラはこの状態からさらに蒸留して造られる。その工程はウイスキーやラム酒など他の蒸留酒と似ていて、見学した工場では全自動化されていた。

 テキーラ酒はアルコール度数が40度前後の強い酒だ。熟成させずに出荷されるものもあるが、木樽で寝かすとより味わい深くなる。さらに果実やコーヒー、チョコレート風味などのリキュールも、少なからず造られている。蒸留工場の見学が終わり、敷地内の庭では食事の時間が待っていた。ここで出てくる飲み物も、もちろんテキーラ。そして、列車にも乗り込んでいたマリアッチの楽団が登場し、楽しいショータイムが始まった。

 初めはマリアッチ楽団に合わせて女性歌手が、ボレロなどのゆったりした曲を歌った。その後に登場したのが、男女3組のダンサーたち。テンポの速い曲に合わせて軽快なステップを踏み、ハリスコを代表する踊りが上演。チャレアーダと呼ばれる縄投げの演技も披露され、熱烈な拍手と歓声が上がった。

 帰りの列車の中でもテキーラが配られて、今日は朝から晩までテキーラづくし。アルコール度数の強い酒なので、中には酔い潰れる人も何人か見受けられた。マリアッチ楽団の演奏も繰り広げられ、車内はお祭り騒ぎで盛り上がる。グアダラハラ駅に到着したのは夜の8時、テキーラ・エクスプレスのツアーはすべて終了した。