さかぐちとおるの世界B級都市紀行
サン・イグナシオ(ベリーズ)
〜マヤ遺跡が点在するグアテマラ国境の近くの街〜
さかぐちとおる
中央アメリカの小国ベリーズの西部に位置するサン・イグナシオ。グアテマラ国境の近くにあり、周囲にはカル・ペチ遺跡、シュナントゥニッチ遺跡などマヤ時代の古代遺跡が点在している。人口1万人にも満たない小さな街だが、遺跡やエコツアーなどを求めて少ないながらも観光客がこの地を訪れる。
ベリーズという国
まずベリーズという国を紹介しよう。北の国境をメキシコ、西の国境をグアテマラに接する小国で面積は日本の四国よりやや大きく、総人口は24万人ほどだ。人種構成は黒人、白人、マヤ系先住民と雑多で、半分近くの人々はそれらの混血と思われる。周囲のほとんどが旧スペインの宗主国でありながら、この地域は17世紀頃からイギリスが盗賊行為をしており、その後イギリスの植民地となって、近年まで英国領ホンジュラスと呼ばれていた。
ベリーズが独立国家になったのは1981年のこと。英国領時代、首都はベリーズ・シティに置かれていたが、毎年のようにやって来る台風の被害を避けるため、独立の直前に内陸のベルモパンに遷都された。この首都ベルモパンは行政施設があるだけの小さな街で、人口は5000人にも満たない。おそらくは世界で最も小さく、のどかで牧歌的な首都でああろう。この国の中心都市はかつても首都ベリーズ・シティであるが、この街も人口わずか8万人ほどだ。
国の産業としては農業や漁業が中心だが、観光産業も盛ん。東部の海岸地帯には白砂のビーチが広がり、サンゴ礁の島も点在していてビーチリゾートが楽しめる。またマヤ時代の古代遺跡も、各地の密林地帯にひっそりと残っている。
グアテマラから陸路で入国
![]() ビザ発行、入国審査のために行列する人たち。私もここで1時間ほど待たされた。 |
グアテマラ北部の観光地フローレスから、ベリーズのサン・イグナシオに向かう。フローレス郊外にはマヤ遺跡で最大規模を誇るティカル遺跡があり、多くの観光客が訪れる。ここからベリーズ・シティまでは旅行会社の小型シャトルバスが運行しており、道中のサン・イグナシオで降ろしてもらうこともできるが、庶民的な雰囲気を感じようと私はあえて一般のバスに乗ってベリーズ国境に向かった。案の定、乗ったのはオンボロのバスで、途中パンクをして立ち往生したものの、3時間ほどかけて無事ベリーズとの国境の街ベンケ・ビエホ・デル・カルメンに着いた。
ここから国境に架かる橋を徒歩で渡り、対岸にあるベリーズの税関へ行く。ベリーズ入国には、日本人を含め多くの外国人はビザが必要。日本のベリーズ領事館でビザを取得すると5000円かかるが、国境の税関では50ベリーズドル(25米ドル)で即発行。1時間近く並んで待ったが、ベリーズに入国することができた。
入国審査を済ませた後、タクシーとバスを乗り継ぎ、サン・イグナシオに到着した。
カル・ペチ遺跡とシュナントゥニッチ遺跡
![]() シュナントゥニッチ遺跡の敷地内には、ピラミッドをはじめ技術の高いマヤ建築が見られる |
サン・イグナシオはベリーズ西部の主要都市であるが、人口は1万人にも満たない。街というよりも村といった感じで、静かでのどかな雰囲気だ。中心部には小さなホテルや、ゲストハウスと呼ばれる民宿が建ち並んでいる。
サン・イグナシオの主な見どころは、郊外にあるマヤ遺跡だ。中心部から歩いて20分ほどの所にカル・ペチ遺跡があり、国境とサン・イグナシオの中間地点あたりにシュナントゥニッチ遺跡が残っている。
カル・ペチとは、時を刻む場所という意味。この遺跡に残っている主な建築物は、6?8世紀に造られたと考えられる。この遺跡の特徴はマヤ・アーチと呼ばれる、持ち上がり式の天井の造りだ。また、ある建物内には階段が入り組んでいて、迷路のようになっている。これは敵が攻めてきた時に、守りやすくしたのではないかと考えられる。
一方のシュナントゥニッチ遺跡は、密林地帯の丘の上にある大きな遺跡だ。ベリーズの2ドル札の裏側にも描かれており、この国で代表的な古代マヤ遺跡の一つである。敷地内には神殿として使用されていたピラミッドがあり、最も高いもので40mある。神殿や建物の壁面には、動物や人、神の装飾が施されている。シュナントゥニッチとは石の女という意味で、9世紀頃が最も栄えていたと想定される。
サン・イグナシオは、町中には観光の対象になるものが何もない。しかし、郊外にはカル・ペチ遺跡、シュナントゥニッチ遺跡がそれぞれ保存状態良く残っており、この両遺跡を見学するだけでもこの地を訪れる価値があるだろう。


