2003年06月02日

「右肩下がり経済」のはじまり

森 摂

最近、気になる数字の発表が続いている。

日本道路公団が管理する全国の高速道路の料金収入が02年度、前年度より約247億円少ない約1兆8176億円にとどまった。 減収は98、01年度に次いで3度目だが、2年連続の減収は初めてだった(5月12日付け朝日新聞)。

NTTが5月13日に発表した2003年3月期連結決算は、売上高が前の期に比べ1%減の10兆9231億円と、 1952年に電電公社として発足して以来、初の減収となった(5月14日付け日本経済新聞)。 5月15日に出そろったJR上場3社(東日本、東海、西日本)の2003年3月期決算では、3社とも単体の鉄道収入は前年割れだった。

高速道路。電話。鉄道。この3つの業種には実は3つの共通項がある。

1つ目は、程度の違いはあるものの、ほぼ独占企業。NTTの携帯電話を除けば、同一業種内で競争原理があまり働かず、 デフレにともなう単価下落の影響が一般消費財やサービスに比べて極めて少なかったこと。にもかかわらず、売上高は落ちた。

2つ目は、「道路」と「電話」と「鉄道」は、経済を人間の体に例えると「血液」や「神経」のようなもので、 実体経済の活性度をほぼ忠実に反映していること。

3つ目は、今後の日本の人口減少にともない、収入がなだらかに右肩下がりになる可能性が大きいこと。

自動車や電機など輸出関連企業なら、国内市場が収縮しても輸出でカバーし、企業としての成長が期待できる。 だが上の3業種は極端な「内需依存型」であり、今後の大幅な売上高の増加は見込めない。株主や市場から評価されるためには、 コストダウンと経営の効率化による利益の捻出しか道はない。

国内経済の縮小はこうした内需依存型企業の経営を根本からゆさぶりかねない。 例えば高速道路では、政府の民営化推進委員会が出した試算は交通量の減少を想定しておらず、プール制や民営化の前提すら崩れる可能性が高い。

「右肩下がり」の経済が、日本にとって悪いことなのかは分からない。「人口減少もGDPの減少も、そのまま受け入れてもいいのでは」との声も少なくない。 だが、「株式市場を通じて資金を調達し、設備投資を重ねて、成長を目指す」という企業行動の原則は右肩下がりを想定していない。 日本の資本主義経済は、大きな転換点を迎えている。

投稿者 森 摂 : 2003年06月02日 00:39 | [EDIT]

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