2005年10月01日
正しいLOHAS 怪しいLOHAS
森 摂
先週発売の週刊東洋経済(05年10月1日号)で、「新しい消費者はここにいる/勃興!LOHASビジネス」と題して特集を組んだ。実はこの見出しは編集部に付けて頂いたもので、私が原稿を出した時には別の仮見出しが付いていた。
それが「正しいLOHAS 怪しいLOHAS」である。
私は昨年7月、このブログで「LOHASを知っていますか」というコラムを書いた。健康と地球環境と気を配る新しいライフスタイルとして紹介、LOHAS的な企業としてパタゴニア(米カリフォルニア州)やインターフェイス(ジョージア州)、ストーニー・フィールドファーム社(ニューハンプシャー州)などを取り上げた。
そのパタゴニアのイヴォン・シュイナード創業者が来日し、時間をくれるというので5年ぶりにインタビューすることになった。その様子も特集の中で紹介しているが、冒頭で衝撃的な言葉が出てきた。
「パタゴニアはLOHASと関係ない。多くの人たちがLOHASに乗ろうとしているが、その一部は必ずしも真剣ではないと思う。LOHASは単なるマーケティング用語だ」
彼の言葉が、最近、私がLOHASに対して漠然と抱いていた疑問を一気に確信に変えてくれた。
私が最初にLOHASを疑問に思ったのは、2006年2月に開港する神戸空港だ。神戸空港ターミナル株式会社が昨年発表したコンセプト概要では「健康と環境を意識した賑わい施設」を目指すとして、「ロハスエアターミナル」を名乗っていた。だが、神戸空港はその必要性の有無をふくめ、巨額の公費投入、環境への悪影響を巡って地元で大きな反対運動があったことはよく知られている。そもそも海を埋め立てて作った空港のどこかLOHASなのか、ちょっと違うのではないか、と感じていた。
取材を進めるに連れ、LOHASを巡る商標ビジネスの動きも加速していたことが分かった。三井物産とトド・プレス社が事業提携し、両社で商標登録の45区分のうち衣食住に渡る41区分を押さえ、近く独占的にビジネスを始めるというのだ。これを聞いて、「NPO」を商標登録した角川書店を思い出した。同社はその後、NPO関係者からの反発があまりにも大きかったため、商標登録を取り下げた経緯がある。
自分の健康と地球環境に配慮するというLOHASの精神は素晴らしいと思う。だが、一部の表層的な動きがLOHASの価値を損なうとすれば、悲しいことである。「単なるマーケティング用語」にとどまらず、ライフスタイルや消費のあり方を根本から見つめ直すきっかけにLOHASがなってくれることを願ってやまない。
投稿者 森 摂 : 2005年10月01日 17:37 | [EDIT]
コメント
LOHAS取材では色々有り難うございました。
正しいLOHAS 怪しいLOHAS、是非やりたかったですね。
日本ではLOHAS自体のポピュラリティーがそれを論じるまでに高まっていないという事でしょうか。
それにしても、LOHASについて調べれば調べるほど頭をもたげてくる疑問は、米国のガチガチの資本主義の中でLOHASの思想がどのように折り合っていくのか、という点です。
企業がLOHASの思想に忠実であろうとすればするほど、利益追求が犠牲になってしまうし、一般的な株主は、LOHASに宣伝効果以上の意味を見出さないでしょう。LOHASと資本主義は根本的に対立してしまいます。
僕がインタビューしたインターフェイスのCEO、レイ・アンダーセン氏も、その辺についてはあまり明瞭ではありませんでした。アンダーセン氏自身は非常にマジメな環境主義者だと思いますが、株主を説得させるためには、LOHASの持つマーケティングアドバンテージをフルに強調しないと難しい、というような事をチラリと言っていました。そういう意味ではパタゴニアのイヴァン・シュイナード氏のように株式を自分で保持して増資もせず、常に会社を自分のコントロール下に置いておく以外には、純粋LOHAS企業は成立しないのかもしれません。
いずれにしても、LOHAS的な思想が今後益々、求められるのは間違いなく、これからどのように浸透していくのかとても興味をそそられます。日本での盛り上がりもこれからやってくると思いますが、同時に多くの虚妄LOHASも登場するでしょう。その時こそ再び「正しいLOHAS怪しいLOHAS」を復活させましょう。
投稿者 岩下慶一 : 2005年10月03日 16:04
LOHASというビジネスモデルを知った時に、「企業に求められている社会的責任」と「利益追求という企業としての本質的な性質」の矛盾した2つのものを求められている企業像を連想しました。
先日読んだ書物「社会起業家」(斉藤槙/岩波新書)に「NPOのような企業、企業のようなNPO」といった組織が紹介されていました。現在LOHASといったモデルというか、思想/哲学を表明しなくとも、実はこれまでの利益追求だけを中心においた考え方では、すでに社会の中における企業の存在意義はなくなっているように思います。
日本における本当の意味でのLOHAS企業やNPOが育つには、それを支える税/法制度など、まだまだ整えなくてはならない部分が沢山あるように思いました。
投稿者 寺町幸枝 : 2005年10月08日 14:43
