2005年01月26日
米繊維輸入の割当て制撤廃で損する国・得する国
寺町幸枝
あまり知られていなかったことだが、米国は日本を含める「外国」からの繊維商品には、ウォータ(Quota)と呼ばれる割当協定やビザ取得を命じることで、実は非常に輸入が規制されていた。それは、第三国・地域産品の迂回輸出等不正な輸出取引を防止する目的で整えられていた制度であった。しかしこのたび、繊維品についてのWTO協定により、2005年1月1日をもってGATTへ統合されたことを受けて、この規制が全面撤廃となった。そして今、この規制撤廃が米国の経済に対するより、むしろ「世界」という広い視野で見た場合の影響が大きいと言われはじめている。
今回の規制全面撤廃で、今後ほぼ全ての繊維商品は通常の輸出プロセスのみで、米国への輸出をすることが可能となった。米国のアパレル業界においては、特に中国やインドへの生産移行に一層拍車がかかると言われており、米国繊維組合(U.S Apparel Union)のあるエコノミストは、400億ドル(約4兆円)の生産が、発展途上国から中国へ移行されると言っている。これまでは、クォータによる規制のために、中国の工場のみに生産依頼が出来なかった企業は、カンボジアやエルサルバドルなど、世界各地の工場へ、積極的に発注をしてきた。しかし、今回の「FREE MARKET FORCE」(生産市場開放)により、そもそも電気もまともに通っていない、カンボジアの小さな村の工場には、仕事の依頼が日に日に減ってきているのだ。ある貿易専門家は、クォータシステムは社会的、政治的安定を維持するためには、最もリーズナブルは手段であり、一部の世界には絶対に必要な仕組みだと言っている。今回の規制撤廃でコスト重視の資本主義企業により、生産性に欠ける途上国では、コストの大幅な削減を余儀なくされるか、発注そのものが無くなっていく、という状況に追い込まれる可能性がある。
もちろん、このクォータの全面撤廃を支持する人は、WTOのルールに則り中国に対する規制は2008年まだ続くので、急速な工場閉鎖や仕事の現象が起きるはずはない、と言っているし、世界最大の量販店であるウォルマートも、これまでのプランから大きく生産予定地などを変えるつもりがないことを発表しているので、急速な生産移行が世界中で起きるはずはない、としている。
しかしこの規制撤廃で、全世界のアパレル業界は完全な価格競争の時代に突入。かくして小国&弱国の国々は、強国/米国のディスカウントのオファーに対して、屈せざるを得なくなっていくだろう。これには、途上国政府が率先してインフラを整備し、世界との競争に打ち勝っていくだけの地盤を固めていかなければならない。ファッションという「楽しくて、華やかな世界」の裏側は、実は今新たな時代の変化という波に襲われている。
参考資料
Los Angeles Times/ Jan. 16, 2005
U.S Customes & Border Protection
http://www.cbp.gov/xp/cgov/import/textiles_and_quotas/textile_status_rpt/
日本繊維輸出組合
http://www.jtea.or.jp/html/for_membership.html
投稿者 寺町幸枝 : 2005年01月26日 17:12 | [EDIT]
