2004年11月11日
さらば『砂漠の不死鳥』
福地波宇郎
2004年11月11日、アラファト議長死亡のニュースは全世界へと伝えられた。
危篤状態とは伝えられており、生命維持装置をいつ外すかの予測が立てられていたのがこの数日だった。埋葬地問題も解決し、エジプトでの葬儀も決定した。
イスラエルの宿敵として長年パレスチナ闘争を率いてきたリーダーの死をイスラエルの人々は複雑な胸中で迎えていた。
イスラエルの報道を追ってみると、議長の死亡自体よりもそれにより起こるパレスチナ人の暴動や埋葬されるラマラに大挙して押し寄せることに対する治安対策が報じられている。
また後継者に関して、現在の体制では武装勢力を押さえられないのではないかという不安も見え隠れしている。何よりも今後の和平行程を考えるにつけ、今までの交渉相手を失ったことにイスラエルではどう考えているのか、現地紙イデオット・アハロノットではweb上で下記のような世論調査を行った。
設問;議長の死により和平交渉はどのようになるか?
A. 良い方向に向かう 75%、
B. 悪い方向に向かう 12%、
C. 何の影響もない 13%
イスラエル国内では93年のオスロ合意以降、全ての交渉や譲歩、約束がアラファト議長により反故にされ、逆に暴動を煽動する演説を繰り返す姿に不信感と虚脱感を植え付けられている。良い方向に向かうとする考えは、これでようやくアラファト議長以外の交渉相手を得ることができるとの表れでもある。
悪い方向に向かうとの答えは武装勢力のさらなる台頭を生むと考える背景がある。
すでに後継勢力に対する反発や挑発もパレスチナ内部で始まっており、内紛の恐れも表面化しつつある。パレスチナ人がアラファト議長を支持していた理由にはそのカリスマ性はもちろん、それにより武装勢力を押さえることができていたからだともされる。
一般にガザでは原理主義勢力が強いというイメージがあるが、大半の人々は「ハマスにはこりごりだ」と感じてもいる。武装勢力の増長により、テロが増えればイスラエルの報復攻撃も増え、その巻き添えを食うのは結局自分達だという自覚がある。そのため、唯一彼らを押さえ込むことができる力を持つアラファト議長を支持する、とガザの人から聞いた。
「あのアラファトが闘争路線を捨てたんだ、他がやっても無駄だよ」とはガザの友人の言葉だがこの言葉に一般市民の本音はこめられている。
このまま後継体制がかたまり、改めてイスラエルとの和平プロセスが進められる可能性があることも事実だ。ブッシュも再選を果たし次の選挙は無いためユダヤ票を気にすることなくパレスチナ問題に介入してくるのではないかとの見方も一部では囁かれている。
一方、最悪のシナリオとしては過去にもあったようにパレスチナ同士での権力闘争から発展する内戦、そして国家保障として内戦を鎮圧する為のイスラエルの武力介入、その結果、新たなるイスラエルVSアラブの抗争という絵図も否定はできない。
イスラエルとパレスチナ、長い流血の歴史の中でさまざまな出来事がおこった。
死ぬまで軍服を脱がず、度重なるイスラエルの暗殺計画を潜り抜け、航空機事故からも奇跡の生還を果たし「砂漠の不死鳥」とよばれた人物は最後まで建国の悲願を抱きつつ息を引き取った。その功罪はこれからの歴史によって語り継がれていくこととなるだろう。
これから中東はまた激動期に入る恐れもある。何もかもが不安定で不確定な見通ししか立てられていない。しかし、今日が中東の歴史において重要な一日であったことは間違いない。
投稿者 福地波宇郎 : 2004年11月11日 23:38 | [EDIT]
