2003年09月19日

大人の「雑貨」勢揃い デザインに無駄なく

本間美紀

8月22日から行われたドイツ・フランクフルト国際消費財見本市「テンデンス・ライフスタイル」展(展示面積22.1万㎡、出展社数3825社)。食器から台所用品、文房具からアート、アクセサリーまで、およそ家具以外の暮らしまわりのものがすべて揃っている。全体ではクラシックからオリエンタル調、まで様々なスタイルをカバーしているが、特に集中するのはドイツや北欧流の無駄のないデザインで、これが日本のバイヤーの目には魅力的に写っているようだ。

求められる「意味ある」シンプル
主催者のメッセ・フランクフルトは同じ分野を扱う見本市「アンビエンテ」を毎年2月に開催。今年からは「春のアンビエンテ」、「秋のテンデンス」としてきた二つの見本市の、明確な差別化を打ち出した。一つのスタイルに的を絞って家具から布類、食器、果ては装身具、ファッションまでをそろえる。そんな「ライフスタイルショップ」の業態は、世界的に定着しつつある。そんな市場の動きをボトムアップで反映させて、今回からテンデンスでは、商品をライフスタイルで分けた展示構成に挑戦している。
この時期にはヨーロッパで同様の見本市「マチェフ(ミラノ)」「メゾン・エ・オブジェ(パリ)」が開かれるが、フランクフルトのこの見本市はドイツ流の無駄のないデザインや北欧製品に強いのが特徴だ。昨年とは会場構成を変わることで、今回は一部の大手メーカーが出展を控えたようだったが、小さくても手堅いスタイルを持ったドイツ・北欧のメーカーの良質なデザイン製品が際立つ結果となった。シンプルなものが中心だが、歴史的なデザインを尊重したり、意味あってそこにたどり着いたという「意味あるシンプル」は、削ぎ落とすだけの「ミニマルデザイン」や、おしゃれ感を重視した「シンプルモダン」とは一線を画している。

MONO
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モノ社はドイツのステンレス製食器メーカーで、創業70年。ステンレスと白い陶器だけで構成された商品群はなめらかな曲線と直線のみでデザインされ、余計な色柄はない。同社では70年代にデザインされたカラープラスチックの柄のカトラリーセットを、すべてステンレス製にリ・デザインした新作を発表。「ミニマルに過ぎず、余分な色柄を取り除いたものが消費者に求められている。次々と新しいものをつくるのではなく、過去のデザインを尊重しつつ、現代のニーズに合わせようとした試みの結果」と言う。日本では無名のメーカーだったが、ここ数年引き合いが急増しているという。


STELTON
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またデンマークのステンレス製品メーカー・ステルトン社も、椅子や建築で有名な同国の建築家アルネ・ヤコブセンがデザインしたポットや灰皿、カトラリーといった日用品などを、永年作り続けている。新製品を次々に出すのではなく、60年代のデザインを手仕上げのステンレス製品として守ってゆく。その姿勢をこの展示会でアピールしているのだという。


FOLLE
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同じくステンレス製品メーカー・フォッレ社(デンマーク)は1933年創業。決して大企業ではないが、40年代にデザインされたステープラーを今なお製造していたり、MOMA(ニューヨークの近代美術館)のコレクションに収録された製品もある実力派。ステンレスの丸棒を曲げただけのハンガーや線の細いブックスタンドなど、そのデザインは簡素だが日本の店頭でも徐々にその名が知られつつある。


SIDE BY SIDE
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「シンプルで直線的なデザインは作りやすさにもつながる。様々な人のビジネスチャンスを広げる」というのはドイツ人デザイナー、ザビーネ・マイヤーさんだ。マイヤーさんはデザインブランド「サイド・バイ・サイド」を主宰、デザイナー仲間と難しい曲線を持たない日用品をデザイン、販売している。これらをハンディキャップを持つ人々と協働で製造しているのだ。カギ掛け、黒板、ミトンなど、全て直線的で素っ気ないほどのデザインは美しく、どこか日本人の心に通じるものもある。この見本市への出展は4回目だが、引き合いは回数を重ねるごとに増え、すでに日本市場へも紹介されている。


こういった商品の一部は日本のショップにも入ってきている。これまで質の高い日用品というとブランド名を冠した高級洋食器がもてはやされてきたが、ここ数年その主役にとって代っているのが、こういったヨーロッパ発の「大人の雑貨」である。発信元はデパートや量販店ではなく、日本のインテリアデザイン業界を牽引するライフスタイルショップだ。美しさの意味を感じられるものと暮らしたい。そんな審美眼を持つ大人の客の強い支持に裏打ちされて、気軽でかわいらしい雑貨だけでなく、このような「美しい日用品」をそろえる店は増えつつある。そんな日本市場のトレンドは、この見本市が発信する情報ともダイレクトに関わっているようである。アンビエンテが大手メーカーの華々しい新作を見るフェアとするならば、今後のテンデンスには知られざる名品、優良企業との出会いの場となることを期待したい。

(ほぼ同内容の記事は平成15年9月13日付けの日経MJにも掲載)

違う視点の本間のレポートはこちらから
http://lifestyle-net.com/myroom/menu/show/i_10/index.html

投稿者 本間美紀 : 2003年09月19日 21:21 | [EDIT]

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