2003年11月22日

どこか「なつかし」感が新鮮 北欧のプリントコットン人気

本間美紀

スウェーデンやフィンランドなど北欧諸国からの輸入生地が、インテリアショップやファッションの世界で注目されている。欧米からの輸入生地といえば英国やイタリア、ドイツの重厚なものが主流だったが、北欧発の布地は、自然をモチーフにした大胆な柄とスモーキーな色調をプリントした軽やかなコットン生地が大半。

そして北欧の生地メーカーは、過去からの意匠を大切にしているのも特長。例えば70年代にデザインされたものが、今なお生産され主力商品となっている。そんなちょっとレトロな柄に、年配者は懐かしさを覚え、若い世代の目には新鮮に感じられているらしい。

そんな北欧プリント人気を生み出したショップ達

IN OUT

「インアウト」(東京・渋谷)はそんな北欧生地の専門店だ。三十年も前に北欧の生地を輸入するアメリカ企業の支社、日本ファブリケーション社としてスタートし、日本に北欧生地を導入したパイオニアだ。その後、服飾資材の専門商社に転身。しかし長く扱ってきた北欧製布地の在庫は大量に残った。ところが「社内では見るのも嫌なものだった」というこの在庫の、レトロな色や柄に再注目する動きが社内で起こった。
在庫はシナサンド社やボロスコットン社など、スウェーデンの代表的なメーカーのものばかり。過去からの在庫ゆえ、70年代にデザインされたものやデッドストックもあり、これが若手社員の目には新鮮に映った。三年前に店名を改め、このどこか懐かしい「在庫生地」二百種を中心に、手芸用品や小家具、雑貨まで売るインテリアショップ風の生地店として再出発。今では月商5百万円を売る人気店だ。デッドストックの柄で特に人気のあるものは、この店がスウェーデンの製造元に特別に復刻を掛け合った。生地の耳にメーカーとインアウトのロゴがともに入った、共同開発商品として生まれ変わった。布ばかりでなく生地のパターンを転写したマグカップの企画も成功。店頭での人気商品となっている。「北欧プリントの魅力は何といってもその色柄。カラフルなだけでなく、水彩画のような、にごり色の利かせがいい。木や花のほか、雲、虹などの天候や壷などの日用品と、モチーフも多種多様」(梅田かおり店長)。値段帯は4,300円/m〜1万円台と高めだが、ファンは増え続けている。売り方も工夫した。メートル単位だけでなく、柄のひとつづきである「リピート」単位でも販売する。また端切れなども柄の面白いところがよく見えるように、レコードのジャケットのように包装して並べる。好みの布地を額装するサービスもはじめている。また柄を見せて間仕切りにしたいという要望も強く、布地をそのまま吊るせるカーテンクリップなどの金物も充実させている。


NORDIC FORM
20031122_nordicform.jpg
北欧インテリアの専門店「ノルディックフォルム」(東京・新宿)では六年前のリニューアル以来、フィンランド・マリメッコ社の製品を中心に、スウェーデン、デンマークの布地を数百種類そろえる。値段は5,000円〜1万円台/m。特にマリメッコ社は有名な花柄「ユニッコ」をはじめ、一番人気がある。やたらと柄を増やすのではなく、同じ柄でもパターンの大小や色違いを増やし、多くの人の趣味にあうようなバリエーションがそろっていて好評だ。
この店では、カーテン売り場とは別に、店内で何種類も布を天井から吊るしている。北欧の質タ剛健な家具やテーブルコーディネートに、柄物の生地を組み合せる楽しさを見せるためだ。北欧の家具はシンプル。ソファの張地も無地の地味目の色が多い。だからこそ布でインテリアに変化をつけてみては、と同店では提案している。
それが功を奏してか、オーダーカーテンを依頼する大半の人が「柄を見せたい」とひだなし仕立てを指定する。「さらにカーテンの縫製時に出た端切れまでほしいという声も多い。自分でバックを作ったり、小物に仕立てたり、とにかくその色柄にほれ込む」(小林マネージャー)。


COLLEX LIVING
20031122_collexliving.jpg
その人気は北欧の専門店以外にも飛び火している。東京・代官山にある「コレックスリビング」は欧米各国の家具、雑貨から布地までを扱うライフスタイルショップだ。2002年10月のオープン時から、ファブリックス売場の目玉は北欧の布。それと知らずに見て、たちまちその柄に魅了される客も多いという。
同店の主力商品の一つに、スウェーデンの斬新なデザインの家具や小物「デビィット・デザイン」がある。その取引を縁に知った北欧生地の、独特の柄と色使いに担当バイヤーが感動。取引を決めた。サンドバーグ社など、同店の家具とあわせやすい色柄四社三十柄を厳選し、展示しているカーテンやクッションカバーの注文のほか、意外なのは「椅子のカバーをつくりたい」という相談が多いことだ。「日本人は大きな家具はシンプルなものを選ぶ傾向が強い。取替え可能なカバーに好みの色柄を選んで、アクセントをつけているのでは」と同店では見ている。


10GRUPPEN

ファッションの世界でも北欧の布地に注目する会社がある。衣類の企画製造・卸を手がける「サーティファイブサマーズ」(東京・渋谷)は、昨年十月、裏原宿に「ティオグルッペン」をオープンした。スウェーデンの同名の生地ブランドの店である。本国では布地から小物までを製造しているが、ここでは得意分野のファッション小物に的を絞って輸入している。やはり70年代にデザインされた柄が人気だ。20代はもちろん、40〜50代の主婦にも人気があり、百貨店や自由が丘あたりのショップからも引き合いがある。「ファッション界で多くの布を見ているが、手書き風の温かみある柄は実に新鮮。独特の世界観があり、そこで売れる商品」(清水太店長)。
同じビル内の衣類の系列店では、バッグと服をコーディネートして買うこともできる。さらには現地のデザイナーと共同で、ティオグルッペンの生地を使った衣類も開発した。グレーやネイビーのシンプルなコートに、鮮やかな色柄の裏地として採用(29,800円)。これが1ヶ月に30枚も売れた。夏にはパターンをそのままプリントしたTシャツも誕生。今後もこの共同企画を発展させていきたいという。


輸入ファブリックスの重いイメージ払拭

北欧家具の人気はすっかり定着した。そして昨年あたりから北欧インテリアの専門店に限らず、ファブリックス、衣類、キッチン用品など、より深く北欧の生活文化の魅力を紹介する店が増えている。なかでもファブリックスは、北欧の文化や風景までを感じられるような、自然な色柄を軽やかにプリントしたものが大半。これまでの輸入ファブリックスの「重い」イメージ—重厚な花柄や歴史的な意匠、強い素材感といったものを、見本帳から選んで注文—を払拭した。さらに北欧生地は華やかなだけでなく、にごった色やスモーキートーンで落ち着きを出したものも多く、この点も日本人の感性にあったのだろう。素材も薄手の綿が多く、機能性というよりも、ふんわりと飾る、自分で何かを作ってみるなど、従来のインテリアファブリックスとは違う、使われ方をしているようである。

(同内容の記事を平成15年11月8日の日経MJに掲載)

投稿者 本間美紀 : 2003年11月22日 21:12 | [EDIT]

コメント

コメントする









名前、アドレスを登録しますか?