2003年12月23日

モダン仕立ての「手づくり感」に注目 フェルトのデザイン小物

本間美紀

寒さが厳しくなる季節、見た目も触り心地も温かな、フェルト素材のデザイン小物が人気だ。素材に厚みがあり、発色が独特。モダンで、それでいて「手づくり感」の残る温かみあるデザインが発表されている。またわが国では、子供の頃にフェルト手芸の経験を持つ女性が多く、そんな人々の目に懐かしく映る素材でもある。だからこそ「ちょっとやぼったい」イメージもあったフェルトが、こんなモダンなデザインになる—そんな意外性が魅力につながっているようだ。またこれらはすべて羊毛などを使った高品質なフェルトで、安価な手芸材料の印象もくつがえした。

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東京・南青山のインテリアショップ「センプレ青山」ではこの冬から、直線的でモダンなフェルト小物の品揃えを大幅に強化した。すべてドイツのブランド「ハイサイン」のもの。フェルト製グッズが専門だ。花瓶、テーブルマット、キーホルダー、アルバムといった日用雑貨から、シートパッド、ラグ、スツールなどのインテリア用品まで15色約20アイテムを、入口に近いメインの売場で並べている。同店では、数年前から欧州の雑貨見本市でモダンなフェルト製品が増えてきたのに注目。三年前、わずか数アイテムから輸入を始めた。そして今年その人気に火が付いた。
広報・中村洋子さんは、「デザインの魅力は、切りっぱなしにできるフェルトの特徴を生かしたシンプルなカットワークと、ぬくもり感のバランス。素材の厚みあってこそ実現する」と説明する。さらにフェルトの意外な機能性も、購買につながっている。例えばシートパッド(五千二百円)は十ミリ厚のフェルトでデザイン。木の椅子など座の固い椅子に敷いて使う。クッションや座布団と違って薄手なのに、ウールの柔らかさを感じられる。家族分がほしい、とまとめ買いする客も少なくない。

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六本木ヒルズ内のセレクトショップ「ドゥ・コート」でも、十月からスウェーデンの工業デザイナー「ピア・ヴァレン」のフェルトグッズを展示している。赤や黄、緑といった原色のフェルトを直線的に断裁。手仕事で製品に仕立てたというものだ。つま先のラインが印象的なルームシューズ(七千八百円)や、曲線を生かしたバッグ(一万八千円)が揃う。「彼女のデザインの面白さはステッチをあえて見せるところ。フェルト地にステッチの糸の色が映えるのを気に入って、買っていく人が多い。工業デザイン的な美しさをもちながら、作る人の手の跡が感じられるのが人気の秘密」と同店では言う。クリスマスらしい雰囲気もあり、十二月に入って売行はさらに好調だ。

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欧米の生活雑貨を輸入するアクセルジャパン(東京・杉並)でも、長く北欧製フェルトの小物を取り扱ってきた。フェルトグッズの人気は今年に入って一般に広まってきた、と同社の城戸恭浩社長は見る。城戸氏は「ハンドメイドブームの影響もあるでしょう。フェルトデザインの面白さは、何といっても自分でもできそうなところ。しかし一見、手が届きそうだが、プロのデザインゆえの洗練が客を引きつける」と説明する。同社で扱う中でも特に人気が「パピーナ」ブランドだ。フィンランドの工房で手作りした製品で、形だけではなく、フェルト素材の製造時に色を混ぜあわせたり、表面にしわをつけたり、ふっくらさせたりと、質感まで工夫した立体的なデザインが特徴だ。ポットカバー(四千八百円)や鍋敷、携帯ケースなど、同じデザインチームの手でありながら、製品の表情はさまざま。フェルトが作り手のメッセージを、豊かに反映できる素材であることがわかる。インテリアショップや百貨店、通販といった販売網で、年代を問わず支持されている。

ファッション小物の分野でも、フェルトに注目する動きがある。イッセイミヤケが展開する「エーポック」ブランドは素材を一体成型してつくる、新しい考え方の衣類を提案している。この秋冬ものの一つ「パウンド」シリーズは、圧縮で一体成型できるフェルトの特質に着目してデザインされた。その一つ「マフラーソックス」(一万四千円)は、広げるとまるで「だまし絵」のようなフェルト生地が、ボタンの留め方でルームソックスにも、マフラーにもなる。そんな「仕掛けのある」デザインが好評で、クリスマスの贈り物向けに六色を発売するや人気が殺到。人気色はすでに売り切れの状態だ。これらのシリーズに使われているのは、実は自動車産業などに使われる工業用フェルト。高品質で複雑なデザインにも耐えうる製造ラインが、「手づくり感」を残しながらもユニークなアイディアを形にした。今後もこのシリーズは引き続き展開していく予定だ。

親しみやすい素材で表現する新しいデザイン

ステンレスやプラスチックのシンプルモダンな雑貨ブームがひと段落し、今度は「手づくり感のあるデザイン」が求められている。「手づくり」といっても作家ものや工芸品より敷居が低く、親しみやすいのが、このフェルトような身近な材料でのデザインだ。モノづくりの面白さを感じられたり、自分で手を加えられたり、といった要素も受けているようだ。二十〜三十代女性に広がっているハンドメイド熱も間違いなく、背景にあるだろう。フェルトが秋冬向けの素材であることも幸いしたが、こういった身近な素材での、ぬくもりあるデザイン雑貨の人気は定着するだろう。この先春夏には、フェルトに代って、リネンやタオル地がブームの兆しだ。

(同内容の記事を平成15年12月20日の日経MJに掲載)

投稿者 本間美紀 : 2003年12月23日 21:01 | [EDIT]

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