2004年01月20日

自然の価値(1):グランドキャニオン 渓谷見られなくても 返金不可

佐藤 香

20040120_gcsun.jpg
グランドキャニオン渓谷に雲が入りこんでいる
青く見える部分は地球の影

北アリゾナ大学に留学していたちょうど2年前の正月。友人と2人で初日の出を拝むためにグランドキャニオンを訪れた。朝の6時過ぎに、サンライズ(日の出)ポイントであるヤバパイ・ポイントに繰り出す。凍てつく寒さの中、太陽が昇るのをじっと待つ。そして夜がしらじらと明け、私たちの目の前に現れたのは今までに見たことがない景色であった。真っ白い雪をかぶった大渓谷の中に、雲がすっぽりと入りこみ、そして雲と渓谷の上には透き通った空が広がっていたのだ。この雲の上を歩いて向こう岸のノースリムまで行けるのではないかと思えるほど、私たちの足元に漂う雲は穏やかである。このような神の業とも思える神秘的な渓谷は始めてであった。

しかし、これには後日談があり、当日訪れていた観光客から公園側に苦情が出ていたのだ。雲が渓谷の中に入りこんでいたため、期待していた美しいグランドキャニオンを見ることができなかった。だから入園料の20ドルを返して欲しいと。公園側はその観光客にどのように対応したのかは分からないが、公園の入口には「入園料返金不可」という張り紙がされた。

グランドキャニオンをはじめて訪れる人の多くは、もちろん絵葉書のような渓谷が見られることを期待してくる。当然、遠い場所から、しかも大金をはたいて訪れるわけだから、その期待度は大きいはずである。しかし、自然は私たちの都合には合わせてくれない。そのためにも、公園側は1週間有効の入園料システムを導入している。しかし、グランドキャニオンでの平均滞在時間は3時間強であるという統計を見ても分かるように、訪問者の多くはそのシステムを活用できないのが現状である。

また、他の国立公園と比べ、野生動物に出会えるチャンスの大きいアラスカのデナリ国立公園でも同じだ。クマやムース、美しいマッキンリー山の写真が広告として掲載されているパンフレットを見て人々は参加してくる。しかし、もっとも混雑する7月、8月のアラスカは天気が不安定で、マッキンリー山は1週間に1日の確率でしか見ることができない。お盆休みだからと言って、クマが目の前に踊り出ては来ない。1日中、いや数日間も雨や霧で何も見ることができなかったら、高いお金を出してきたのに。と落胆する人が出てくるのも容易に想像がつく。

「満足度」、特に自然に対する「満足度」をお金で計るのは非常に困難である。日本に比べアメリカでは購入したものに満足がいかなければ、容易に返品できる社会だが、だからと言って自分の期待していた自然を体験できなかったからといって返金を求めるのはおかしな話しである。自然に対し何を期待して訪れるのかは人それぞれであるが、自然は私たちの都合に合わせてはくれないのだ。

……

いや、待てよ。よくよく考えてみれば、公共の場として税金で運営されている国立公園になぜさらに入場料を払わなければいけないのか?景色を見るため、ちょっと公園の中を歩くのに、なぜ20ドルもの入場料を払わなければいけないのか?これがアメリカで論議を呼んでいる「ユーザー・フィー問題」または「レクリエーション・フィー問題」である。

投稿者 佐藤 香 : 2004年01月20日 18:16 | [EDIT]

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