2004年02月11日

刑罰の厳罰化がもたらすもの

鷹井 潤

 野沢太三法相は10日、殺人などの凶悪犯罪に対する抑止力を高めるため、 刑法と刑事訴訟法の改正を法制審議会に諮問した様子である。 これは最近の少年法改正など刑罰対象の拡張、厳罰化の流れに沿ったものと考えられ、 被害者感情も考慮したものであろう。これら法改正のもたらす効果と問題点を考察してみたい。

1 抑止できる犯罪とは?
 そもそもこの発想を裏付ける刑法理論(心理強制説)が想定する犯罪者とは分別のある、 自立した個人である。つまり犯行と刑罰を冷静に秤に掛け、自らの行動を律することを想定している。 しかし薬物密輸犯、交通犯などなら彼らの「経済感覚」に期待できようが、 分別のある凶悪犯罪者という存在は、少しばかり想像力を必要とするのではあるまいか? 一方極論として、出所させることが最大の再犯の原因であると言い切るのであれば、 当然に抑止できることになろう。

2 刑罰の執行と緩和装置
 司法機関は判決を言い渡せばその役目を終える。しかし刑罰の実現という長い道のりが、 刑務所に引き継がれることになる。長引く不況が犯罪を増加させており、 またすでに裁判官の判断も現行法内で厳罰化に向かっていることから、 ほとんどの刑務所では過剰拘禁の状態にある。とはいえ、むやみに刑務所建設などできるものではない。 そこで苦肉の策として行刑当局の行うことは、厚生保護機関と連携して仮釈放率を上げることである。 当然無理をして出所させれば短期間で再犯に至ることも多いであろうし、 それが時には重大事件ともなりうるリスクの多い対応策である。

3 矯正の理念は変化するだろうか?
 事実はともあれ、日本の行刑を支配してきた理念は、規律と労働による犯罪性の矯正であった。 しかし司法制度の要求は社会防衛と応報に傾きつつあるようだ。また厳格な規律で管理することが、 人権への配慮を欠くものとして見られるようにもなっている。塀の中では最大限の自由を保障しながら、 刑務所の機能を犯罪者の社会からの隔離に集中し、日本の数十倍の受刑者を抱え込むアメリカ型の行刑に、 日本のそれも近づきつつあるのだろうか?

投稿者 鷹井 潤 : 2004年02月11日 22:01 | [EDIT]

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