2004年03月15日

東京の聖パトリックデイ、緑色への忠誠

鷹井 潤

 毎年3月17日、アイルランドの守護聖人パトリックの日になると、世界のあちこちが緑色に染まる。つまり世界中に散らばるアイルランド系の住民が緑色をイメージカラーにして町をパレードするからである。本国以外では合衆国、オーストラリアなどアイルランド移民を受け入れた国が中心である。移民の末裔であると称する人々が7千万いるそうだから、これは大規模な民族的示威行動と言えなくもない。

 実は日本でも毎年3月17日近くになると、東京原宿の表参道などでこの聖パトリックデイのパレードが企画されている。しかしながら日本は移民国でもないし、東京在住のアイルランド人は5百人弱しかいない。日本の小原さんや大原さんをO'hara(典型的なアイルランド姓)さんの代用としても、とても自前でパレードするほどの勢力とは思えない。その他大勢の、趣味でアイルランドが好きな人がそこまで熱心なのである。緑の垂れ幕や、アイルランド国旗が翻り、マーチングバンドや民族楽器の演奏の中、アイリッシュダンスが踊られ、巨大なギネスビールのバルーンが空を舞う様は、本場とさほど変わらないだろう。終了後はアイリッシュパブで飲むという作法もしっかり守られている。さらにコテコテにしつこくする場合には、パブの閉店時間までねばり、起立してアイルランド国家斉唱という具合にお開きとなるが、これは世界的な奇観ではないだろうか?

 最近、アイルランドの伝統文化の保護、普及を目的とする日本の団体が、海外からの問い合わせにあわてたという事件があるらしい。この団体のウェブサイトが、IRA関係のウェブサイトにリンクしているというのだ。この団体は楽しくアイリッシュダンスを学ぶことを旨としており、テロ組織を支援しているわけでも何でもないのだが、伝統文化の強調、これを政治的立場で見れば民族主義の高揚である。周知の通り北アイルランドには根深い民族的対立があり、緑とオレンジに象徴されている。外国文化を器用にコピーし導入する技術について、日本人は実に才能を発揮するが、時に深刻なナイーブさを露呈することがあるようだ。

投稿者 鷹井 潤 : 2004年03月15日 21:52 | [EDIT]

コメント

コメントする









名前、アドレスを登録しますか?