2004年02月17日
プロ野球と高校野球の「雪解け」(下)
成田好三
大学、社会人はその後、なし崩し的に不自然な関係を修復してきた。しかし、高校生とプロとの関係は修復されなかった。学生野球の「憲法」にあたる日本学生野球憲章は、プロ(現役、OB)による技術指導を原則的に禁止している。高校野球はこの憲章を厳密に守り続け、高校生がプロの指導を受けることを一切認めなかった。
関係断絶は極めて不自然で異様な現実をもたらした。プロは出身校の高校生にさえ指導できなくなった。キャッチボールどころか、出身校のグラウンドに足を踏み入れることさえ避けねばならなくなった。それらの行為は、プロの高校生に対する指導と受け止められたからだ。
プロを選択した高校生はドラフト前に野球部を退部する。現役部員のままではドラフトを受けられない。だから、プロ入りするその高校で最も優れた部員は、卒業する春まで部員ではいられない。彼らは「途中退部者」扱いになる。
もっと常識外のことも起きる。プロの父親と高校生の子どもの間で、野球の指導はおろか野球に関する話もできないことになる。家庭内で野球に関する話をすることも、庭でキャッチボールをすることもプロによる指導に当たるからである。もちろん、こんな「建て前」を守る父子はいない。しかし、表向きは父子間の指導は「秘密」扱いにしなければならない。
2004年1月28日、プロと高校野球を統括する日本高野連がある「覚書」を交わした。ドラフトに関する3か条だ。この覚書の締結をもって、今年11月をめどに、プロによる「一時的」技術指導を高野連が受け入れる方向になった。
高校野球とプロとの「雪解け」の始まりだ。しかし、この動きは始まったばかりである。プロと高野連の関係を注意深く見守る必要がある。40年以上にわたった関係断絶を終わらせなければ、日本における野球の発展はない。
「雪解け」に関する印象的なコメントを引用する。「このオフまでには現役のプロ野球選手が母校に帰って後輩たちとキャッチボールが出来るような具体的なルール作りを検討したい」(脇村春夫・日本高野連会長、1月29日付読売)。「ドラフトで契約してしまうと(卒業前でも)グラウンドに入らず、バックネット裏で見ている教え子もいた。選手と会話すると技術指導と取られかねないと、気を使っている子もいた」(日大三高・小倉全由監督、1月27日配信、共同通信)
先輩と後輩がキャッチボールさえできない、プロ入りが決まった選手がグラウンドに足を踏み入れることさえできない。そんな不自然で異常な現実は、一刻でも早く終わらせなければならない。
投稿者 成田好三 : 2004年02月17日 18:43 | [EDIT]
