2004年02月21日

政治家が編み出す新たな釈明スタイル(下)—学歴詐称疑惑で古賀潤一郎氏が提示したもの—

成田好三

 街頭演説では記者の辛らつな質問にさらされることはない。一方的に自らの見解を表明できる。しかも、当事者と支持者(事前に動員できる)が記者を取り囲む形になるから、記者に無言の圧力をかけることも可能になる。さらに言えば、釈明しながらも、遠巻きにした市民の表情、反応も直接感じることができる。釈明の場としては、考え得る最高の舞台設定になる。


 古賀氏は街頭演説の後に記者会見に応じたが、いきなり記者会見するよりもかなり余裕をもってその場に臨めたのではないか。支持者や有権者の反応を確認した上で対応できたからである。


 古賀氏の関心事は全国民の反応ではない。福岡2区の有権者が古賀氏の釈明をどう受け止めるかにある。だからこそ釈明の場に街頭演説を選択した。メディアが彼の選択を無視できないことは明らかだった。TVは、街頭演説で古賀氏が涙を流して釈明する場面を繰り返し放送した。新聞も写真付きで大きく扱った。古賀氏は政治家としてはかなりいい嗅覚をもった人物なのだろう。


 古賀氏の街頭演説作戦が成功したかどうかは、現時点では分からない。しかし、政治家が釈明する場は記者会見であるという、メディアの常識を打ち砕いたことだけは、確かなことだ。街頭演説での釈明を、わが身に疑惑がふりかかった場合を想定して、注意深く見守っていた政治家は多かったのではないか。


 古賀氏ばかりではない。メディアに対して、情報発信者が次々と新たなスタイルを提示する時代になった。さらに言えば、発信者自体がメディア化してきた。国家から民間会社、芸能人、スポーツ選手、一般市民までもが自らのホームページなどで、メディアを通さず直接情報を発信する時代になった。


 ポップスやロックなど音楽の分野では、芸能人が舞台上から、あるいはホームページから情報を発信する。芸能メディアにとっては、芸能人が発信する恋人や結婚の情報は重要ニュースである。芸能メデイアは芸能人が自ら発信する、従来のメディアを通さない情報をあと追いしなければならない時代になった。


 イラク戦争では、米国防総省に雇われた敏腕の女性広報官が従軍記者の「埋め込み」作戦を練り上げた。彼女のメディア戦略は絶大な効果をもたらした。軍隊に埋め込まれた従軍記者は軍隊と「運命共同体」の意識をもつからだ。


 情報発信者が次々と新たな発信スタイルを編み出す時代に、メディアはどう対応するのだろうか。従来の手法を踏襲するだけでは済まないことだけは確かなことだ。

投稿者 成田好三 : 2004年02月21日 18:41 | [EDIT]

コメント

コメントする









名前、アドレスを登録しますか?