2004年07月18日
フルスイングに込められたメッセージ
成田好三
近鉄とオリックスの合併問題に端を発し、来季の1リーグ化への動きが行きつ戻りつする中で、7月10、11日に開催されたプロ野球オールスター戦は、パ・リーグの2連勝で終わった。当然の結果である。パの選手の目の色が違っていた。「今年だけは絶対に負けられない」。それがパの選手の共通認識だったからである。
マスメディアは1リーグ化の是非ばかりを、しかも感情論的に論じているが、それは皮相な見方である。この問題は、戦後50年以上も続いた歪な構造が、水圧に耐えられなくなったダムや堤防が決壊するように、ついに終わりを迎えたことを示している。歪な構造に耐えてきたパ・リーグが、ライバルであるセ・リーグにリーグ運営と球団経営面で敗北し、セに「救済合併」を求めることを意味するからである。
第1戦をテレビで見た印象は鮮烈だった。小笠原道大、中村紀洋、和田一浩、松中信彦、城島健司らパの強打者たちはすべて、フルスイングでセの投手に立ち向かっていた。第2戦は、新庄剛志がオールスター戦で初めての単独での本盗を成功させた。滑り込んだまま、本塁上で手足をバタバタと動かして歓びを表現する新庄の姿も鮮烈だった。現在のセ・リーグには、新庄のようなスター性をもった選手はいない。
第2戦終了後、全パの王貞治監督は、こうコメントしている。「色んな問題の中、パ・リーグはお荷物のようなリーグではないことを示せたと思う」(7月12日付朝日新聞)。パの選手たちには、王監督以上に語りたい強い思いがあったはずであるパの選手たちの思いを「代弁」したくなった。彼らはこんなことを言いたかったのではないだろうか。
「確かにパはセに比べて観客動員数は少ない。経営が苦しい球団も多い。しかし、人気面、経営面での差は、全国ネットでテレビ中継される読売巨人軍と対戦できるセと、そうではないパの違いである。FA(フリーエージェント)で有力選手がセに移っても、実力では、パはセを上回っている。そのことを全国の野球ファンに証明しなければならない」
第1戦でのフルスイング、その結果として生まれた城島、松中らの豪快な本塁打、速球勝負などというつまらないこだわりを棄てた松坂大輔の快投、第2戦での新庄の意表をついた本盗は、パの選手たちの思いを、無言のうちに伝えるメッセージだった。
プロ野球はオールスター戦を終えて折り返し後半戦に入る。8月には全員プロの日本代表がアテネ五輪に出場する。野球ファンは真夏のリーグ優勝戦線とアテネでの日本代表の試合に熱い声援を送るだろう。しかし、そうした白熱した試合の裏では、球団オーナーたちが、ファンには見えない舞台で、球界再編、1リーグ化への準備を進めていくに違いない
オールスター戦で見せたパの選手のフルスイングによるメッセージは、古い体制を守るだけの、野球界全体ではなく自らの利益だけしか考えない、球団オーナーたちの耳には届くことはないのだろうか。
投稿者 成田好三 : 2004年07月18日 18:33 | [EDIT]
