2003年09月30日
アメリカ大統領が白人でなくなる日
森 摂
カリフォルニア州知事選に俳優のアーノルド・シュワルツネッガー氏(共和党)が出馬し、 選挙戦を有利に進めている。そして、シュワ氏に次ぐ支持率を集めているのが、 クルース・ブスタマンテ副知事(民主党)。地味なキャラクターで、しかもリコール目前の 現職知事の側近であるという「ハンディキャップ」がありながら、ブスタマンテ副知事がなぜ、 知名度抜群の俳優に善戦できるのか。その背景には、「ラテン系人口の急増」という 米国社会構造の急速な変化がある。
ブスタマンテ副知事は1953年、カリフォルニア州ディヌバの生まれ。共働きで、 父親は二つの仕事を掛け持ちしていたという働き者夫婦の家庭に育った。 カリフォルニア州立フレズノ大学を卒業、1993年にカリフォルニア州第31地区の行政官に着任して以降、 着実に官僚としての階段を上り詰めてきた。
2000年の統計では、カリフォルニア州の人口3387万人のうち、ラテン系(中南米系)は実に32.4%。 この10年で構成比は13ポイントも増えた。その多くはメキシコ系だが、グァテマラ、エルサルバドルなど 中米からの移民も増えている。アメリカ全土でも2002年、ラテン系の人口が3880万人と 初めて黒人(3830万人、いずれも米統計局調べ)を抜き、マジョリティの白人に次ぐ、 「最大のマイノリティ」という存在になった。
メキシコからの移民が増え始めたのは、1948年の「ブラセロ・プラン」が契機。アメリカの急速な工業化にともなって カリフォル二アや南部の農業の担い手が不足し、メキシコから移民を導入したのだ。その後「ブラセロ・プラン」は終了したが、 移民はそのまま土地に定着し、ラテン系人口が増える礎となった。
ラテン系の移民に対しては「低所得」「不法移民」「庭の芝刈り」「英語が話せない」という先入観があるが、 実は誤りだ。確かに移民の第1世代はそうした側面が濃いが、彼らの中には、日系移民と同様、 比較的子女の教育には力を入れ、高等教育を受けさせる家庭も少なくない。 アメリカ生まれのラテン系子女は米国の市民権を持ち、英語はもちろんネイティブ。大学を卒業したラテン系の若者の中には、 米国流のビジネスを学び、自ら起業したり、行政など権力構造の中心部に入ったりしたものも少なくない。ブスタマンテ副知事も、その一人だ。
9月中旬、全米映画興行ランキング(Exhibitor Relations社調べ)のトップには「Once Upon a Time in Mexico」という映画が躍り出た。 メキシコでクーデターを起こそうとする革命のヒーローを描いたスペクタクルだ。最近、ハリウッド映画で、メキシコやラテン系を描いた映画が増えており、 しかもそこそこの興行成績を上げている。ジュリア・ロバーツやブラッド・ピットらのスーパースターを起用した「The Mexican」もその一つ。 これを、映画の聴衆の人種や趣味志向の分析に敏感なハリウッド大手スタジオのマーケティング政策の変化の一環と見る向きもある。
ブッシュ大統領も2000年の前回選挙では盛んにスペイン語を話し、親メキシコ、親ラテン系を強調した。いまや、ラテン系は政治的にも一大勢力になりつつある。 米統計局の予測では、2050年のラテン系の全米人口比率は24.3%。今回のカリフォル二ア州知事選ではブスタマンテ氏の劣勢が色濃くなってきたが、 メキシコ系の大統領や副大統領の誕生は、そう遠くないのかも知れない。
投稿者 森 摂 : 2003年09月30日 18:22 | [EDIT]
