2003年07月31日

「640円ハンバーガー」は成功するか

森 摂

ハンバーガーのモスフードサービスが、8月4日から「ニッポンのバーガー匠味(たくみ)」(580円)と「同 匠味チーズ」(640円)を始める。 しゃぶしゃぶなどに使用される牛ウデ肉だけを使ったパテの重さは120グラム。今までの1.8倍だ。 レタス、トマト、炒め玉ねぎもたっぷり入り、特製しょうゆベースのソースがかかる。


この値段は、同社の定番商品「モスバーガー」(290円)の2倍以上。4月に日本マクドナルドが始めた「プレミアムマック」(270円)が低迷しているだけに、 早くも疑問の声も上がっている。


だが、モスバーガーの「匠味」には、ソニーの高級製品群「クオリア」やトヨタの高級自動車ブランド「レクサス」に一脈通じるものを感じさせる。 共通項は「モノづくり」「味づくり」の担い手としての「誇り」を取り戻す作業であることだ。


ここ数年、デフレの進行で、あらゆる消費財が中国などからの低価格圧力に押されて、コストダウンを強いられてきた。 手に塩をかけた製品が流通の最前線で安売りされるのを見て、経営者だけでなく生産の担当者たちは、言いようのない疲弊感を味わされてきただろう。


クオリアや匠味バーガーは、単に利益率を向上させるのではなく、デフレで疲弊した製造の最前線を復活させるための作業ではないか。


「クオリア」は東京・銀座のショールームでしか触れることはできない。1台130万円と、テレビモニターとしては相当高い「QUALIA 015」はライン生産ではなく、 一つ一つが手作り。注文生産のため、納品には約1ヶ月以上かかる。


米国でナンバー1高級車の評判を得たトヨタ「レクサス」も、わずか「4mm」にこだわった。従来トヨタ車では前部と後部のドアの間に7mmの隙間があったのを、 LS400では4mmにすることを目指した。わずか3mmの「カイゼン」だが、これにより走行中の風切り音が飛躍的に減ることが分かっていた。 このため、金型の鋳造から外装の仕上げまで、徹底的に工程を見直した。


匠味バーガーは、1店あたり1日わずか10個の限定生産。注文を受けてから、客に出すまで10分程度もかかる。さらに、「製造責任者」を明記したカードも客に配るという。


匠味バーガーをつくるためには、数多い調理担当者の中から選ばれなければならない。そこに新たな競争が生まれ、全体の調理技術の向上も見込める。 成功すれば、単に利益率の向上だけではない「無形の効果」も期待できる。それが無形の「ブランド資産」なのだ。


筆者もまだ匠味バーガーを経験していないので、これ以上の期待は込められない。だが、デフレで多くのメーカーや外食・サービス企業の現場が痛んでいる中で、 匠味やクオリアのような「プレミアム・ブランド」への試みは光っている。

投稿者 森 摂 : 2003年07月31日 18:17 | [EDIT]

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