2004年06月29日

デフレは本当に終わるのか

森 摂

 デフレに収束の兆しが見えている。総務省が5月末に発表した4月の全国の消費者物価指数(2000年=100)は生鮮食品を除いた総合で97.9となり、前年同月に比べて0.2%下落した。下落率は前月より0.1ポイント拡大したものの、前年の医療費負担増など物価押し上げ要因が消えたのにかかわらず下落が小幅にとどまったため、総務省は「デフレ圧力が徐々に弱まっている」との見方を示した。

 日銀が発表した4月の国内企業物価指数(企業間取引の価格水準、2000年平均=100)も95.6となり、前月比では0.1%上昇、前年同月比0.5%上昇し、2カ月連続して前年を上回った。原油やゴムなど国際的な原料価格の高騰が影響したかっこうだ。

 このままデフレは収束し、インフレに向かうのだろうか。

 この問題を考えるには、デフレを広義の「ストック」と「フロー」に分けて考えなければならない。「フロー」とは消費財のことで、モノのデフレはここ10年、世界的に続いている。言うまでもなく、中国やアジア、中南米など人件費が圧倒的に低い国々からの製品輸出が世界を席巻し、先進国を中心に物価が下がり続けていることを示す。ウォルマートもユニクロも、輸入抜きでの低価格販売はあり得なかった。

 一方、「ストック」とは土地や株のことだ。株式の下落は企業の保有株式の含み損につながり、これによる特別損失はここ10年以上、企業業績の足を引っ張ってきた。日経平均株価は1989年のピークに比べるとまだ3分の1以下の水準だ。

 地価の下落も続いている。今年1月1日時点での住宅地の全国平均公示地価(国土交通省調べ)は1991年のピーク時から43%下落、商業地も67%下がった。現在の地価は住宅地で1989年、商業地はなんと1975年の水準にまで戻ってしまった。

 では今後、モノの価格と資産の価格はどのように推移するだろうか。

 モノについては、国際的な原料の高騰が中長期的に続くとは考えにくい。原油高は不安定な中東情勢など地政学的なリスクを反映したものであり、需要が戻っているわけではない。今後も第三世界からの旺盛な輸出、国際的な企業間競争という価格押し下げ要因は、原料高などの価格押し上げ要因を上回りそうだ

 資産については、株価はともかく、地価が今後上昇に転じる可能性はかなり低い。地価も需要と供給のバランスで決まる以上、2006年から日本の総人口が減少に転じるなかで、今後上昇に転じる見込みは薄い。東京都心の地価が上昇に転じているが、これはあくまで局地的な現象だ

 資産デフレが続けば、間接的に消費を低迷させる。株式投資による損失や住宅ローンの圧迫感は今後も続く。つまり、多少の波はあるとしても、今後しばらくはモノも資産も価格下落傾向は続くとみるべきだ。それを打ち破るのは、より高付加価値の製品の輸出が増え、それが労働者の所得に反映し、設備投資が増え、日本経済全体が活性化するという図式以外にはあり得ない。これには少々、時間がかかりそうだ。

投稿者 森 摂 : 2004年06月29日 17:59 | [EDIT]

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